商談。とるかとられるかの緊迫感

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ほんの一瞬、先方の気持ちが離れたら駄目な時があるんです。

一番店のクライアントとの社長とはまさにたまの取り合いです。徹底的に準備した提案書を出し、商談と言う名の最高のプレゼンを始めます。よどみなく話さないといけません。社長の顔色、動き声のトーン等すべて逃さず臨機応変に対応を変えないといけません。

これは面白いぞと言う時、社長はタバコを吸います。たばこに手を伸ばしたらテーブルにあるライターをとり社長の煙草に火をつけます。左に傾いている首が前に倒れます。斜めになるので軌道がかわります。それを予想しそこに火をだします。

その間に灰皿を左手でづらします。さりげなくです。注意が灰皿に行っては駄目です。商談のながれを切っては駄目です。

普通の商談の時はここまで気を張らなくて良いです。とらない確率がうんと高いのもここまではないです。こんな商談になるときはとってもとらなくてもいいという時です。徹底的にメリットを説明しなかば夢心地にさせないといけません。だますのではないです。購入のために背中を押すのです。

今日の流れは最高です。まもなく「よっしゃ送っといて」の声が聞けそうです。いよいよその声がでる、まさにその時後ろから声がします。「あんた、次待ってはんで」専務である奥さんの声です。

終わりです。商談は決裂です。奥さんへの説得が足らなかったようです。事務所には奥さんも他の従業員もおられます。仕切り板いちまいの奥のソファーで商談です。奥さんはいつも聞き耳を立てています。前の社長と説得しながら後ろの奥さんも納得する内容を提示しないといけないんです。

その一言で社長は夢の中から現実に引き戻されます。「わかった、考えとくわ」この言葉を言ってほんまに考えておく人はおそらく10人に1人もいないでしょう。断り文句です。

今回は奥さんが登場しましたが実はこれ、奥さんがいなくても同じなんです。同じタイミングで他のメーカーや配達の人がきたりして、一瞬魔法がとけたら決まらないんです。メーカー同士は暗黙の了解があるのですが、宅配便の人はどうしようもないです。

運にも大きく左右されます。

でも自分のミスでとれない率を下げるために、明日からも最高のタイミングで火をつけつづけます。