徹底追及BUT NOT要求

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知らんがなである。

「みさおさん英語ペラペラなんでしょ?」
と、とあるコミュニティで知り合った友達が聞いてくる。
「はい、普通に生活するくらいなら大丈夫な程度は話せますよ」
とわたし。
「ええすごいねえ。これから英語勉強しようと思ってて、また今度教えて?」
「はい、いいですよ。私で良ければいつでも」
と別れた。

これって社交辞令なんだよねって事を最近受け入れることにした。いっとき、今度ごはんでも行こうよとかいう話に、うんといいながら全然行かない、社交辞令ってのを異様に避けている時があって、行くって言ったんやったら行こうよ、その気ないのに誘うなよと目くじらを立て、社交辞令でも何でも俺はそれを正規の約束ととるって思って行動していたが、あまりにも世の中社交辞令が多いので、社交辞令は社交辞令ととることにした。主義に反するが臨機応変ってことも必要なのでそうした。

話がそれたので元に戻す。こんな会話はあきらかに社交辞令なので、そうしていたが、これはそうじゃなかった。この間久しぶりにあったら、この間の英語なんだけど教えてくれるとその人が言ってきた。ええ逆に社交辞令じゃないのかと、ひざが抜けそうになったが、本気ならそれでいい、わかりました。といった。とりあえず、私の学習方法を知ってからのほうがいいので、一回お茶でも飲みながら話しましょうと言った。すると彼女は「いいです、もうはじめましょう。みさおさんのやり方にすべて従いますから」と言った。そう言って、全然従わない人のほうが多いので、無理やり事前打ち合わせをする約束をとりつけた。

打ち合わせの日がきた。待ち合わせのカフェに行ったら彼女が待っていた。さっそくコーヒーを持って打ち合わせを始めた。
「英語って言っても色々あります。英語を学んでどうしたいのですか?」
と私が聞いた。とても大切なことなので最初に聞く
「海外旅行が好きなので、現地に行った時に街の人とかとちょっとコミュニケーションをとりたいんです。だから英会話ですね」
と彼女。もっとも多い目的のひとつだ。明確な目標があるのでプランが立てやすい
「わかりました。英会話ですね。じゃあ聞きますけど、中学校の英語の成績はどうでしたか。英会話には難しい文法は出てこないのでほとんど中学校の文法でこと足ります。成績良ければ文法の勉強はいらないですけど」
そういうと、話をさえぎって
「だめです。全然だめでした。もういきなりつまづいて」
と彼女。
「ああそうですか。だったらまず中学校の文法とそこに出てくる単語を覚えるところからですね」
と言うと
「え〜文法と単語ですか?勉強みたいでいやだなあ、それどうしてもやらないとダメですか?英会話を学んでいくなかで、おぼえるとかではだめですか?」
と彼女。

これだよ。予想通り。みさおさんに従います。一生ついていきますって勢いだったのに、初っぱなから、え〜、かよ。打ち合わせしといてよかったわ。
「いえいえ全然だめじゃないですよ。色々な方法ありますから。英会話学校とかは、そういう方法をとっているところ多いですからね。子供が言葉を習うときに文法やったり、単語帳で単語覚えたりしませんからね、ありですよ。ただ、私は、まず文法やってある程度700語くらいの単語を先に覚えてもらうやり方のほうが成果があがると思っているのでそれでやってるだけですから」
「え〜、わかりました。じゃあ単語だけ覚えるのではだめ?文法はもうあの五文型とか品詞とか過去形とかが嫌で、無理なんです」
と彼女。
「ごめん、俺の教え方の中から文法を省くのは無理やねん。◯◯さんの学びたいやり方で教えている友達がいるから、紹介するわ、それでどう?」
「え〜、みさおさんから、教わりたかったから、その人はいいです。どうしても文法しないとダメですか?」
「はい、その方法でしか教えられないのでね、ごめんなさいね」

結局この話は成立しなかった。その後しばらくして久しぶりに彼女にあった。彼女は結局英会話学校に行っているという。どんどん上達し楽しいと言っていた。みさおさんから教えてもらえなかったけど今上達してるから良かった、みさおさん、ありがとうねと言っていた。そして最後に、
「みさおさん、文法なんてやっても英語上達しないって言ってたよ。それがもし本当なら日本人のほとんどが英語話せるようになっているはずやって、じゃあね」
と手を振り走っていった。

知らんがなである。勝手に盛り上がって、勝手に去って行って、その捨て台詞はいらんやろって思う。色々なやり方があるとも言ってるのに。

世の中は多様だ。英語を学ぶひとつとっても、ありとあらゆる方法がある。どれがいいか、どれが悪いかなんかわからない。だから俺は、自分が信じた方法でやる。それしかないのである。でもそれが絶対に正しいと思っているのは自分にとってであって、それが万人に合うなんて思っていない。だから一切の強要をしない。

英語を学びたい人や学んでいる人をとっ捕まえて、そのやり方はダメだ、これをやれなんて言っていないのである。それなのに、そんな風に言うなんて。

私は思考クラブというユニットを組んでいる。ものごとについて徹底的に考えるということを日々行なっている、思考芸人みさおの元となるコンビだ。そのユニットには理念がある。

自分たちで追求し、これはおそらく絶対間違いないだろうってとこまでやる。だけど、それを、これがいいからやりなさいとは絶対に言わない。世の中は多様だからだ。ただ、もしかしたら、この方法が、世の中の人の中には役に立つという人がいるかもしれない。だから我々はその方法を世に解き放つ。

この解き放つってのに美学を感じている。もしよければいかがですかって感じがカッコイイと思うのだがいかがだろうか。