その返事はないでしょう

シェアする

先日書いた記事<営業マンの美学>にはとんでもない落ちがある。前回の商談を決めた河村操はこの月、目標を達成した。そのキーとなった商談の成功。上司に報告しようと喜び勇んで帰社した。

「課長、やりました。C店の商談決まりました。」上司も、このC店がキーだと言う事は承知している。ここが決まらなくては、私の目標も達成できないし、ひいてはそれが、チームの目標達成にも影響する。そんな、店の商談。決めたのだ。しかも、簡単に決めたのではない。

いろいろ手を回し、情報戦を制し、他メーカーと攻防しながら、勝ち取った商談だ。どうですか課長、すごいでしょ。ちょっとくらい誇ってもいいでしょ、という感じだった。

ところが上司の返事はとんでもないものだった。

「決算明けだろ、まあ入るだろ。それで、D店は?」「いや、課長、それがですね。そんなに簡単ではなかったんですよ、決算明けだったんですが、A社がね、、、、、」と話している私を制して、「C店はまあいいや、ところでD店は?」おいおい、ちょっと待ってくれよ、ご苦労さんって言うたらええだけやろ。ちょっとほめてくれたらそれで、天にも昇るくらい嬉しくてがんばんのに、何やねんお前。と河村操は思った。

そのかん一度も目線をくれず、PCに向かっている。後ろから椅子を思い切り蹴って椅子と机の間にメタボの腹をはさんで、ヒイヒイ言わしたる衝動にかられたが、中堅河村操はやめた。新人河村操ならやってたかも知れない。

「D店はとれませんでした。」「何やってんの?」と上司は振り返って河村操を見た。こんな時は見んねんな、と河村操は思った。「そしたら、今日は絶対に決めてきて、E店には今日行くんだろ」「はあ」と力なく河村操は返事した。「なんか頼りないなあ、頼むよ河村」とあきれまなこで放った上司は再び彼に背を向けた。

逆に椅子をひっぱって、ヒュイーンってフロアの上を転がして、最後にキャスターが段差にぶつかって転んで痛い、痛いって言わしたろかと、河村操は思ったが、やめておいた。定年まじかの超ベテラン河村操ならやってたかも知れない。

「おーそうか、大変だったなあ。あそこの社長は一筋縄ではいかんからなあ、大変だったろう。ご苦労さん。あそこ決めてくれたのは大きいよ。これでチームの目標も見えて来たなあ。ありがとう、河村のおかげだよ」って言うたらええだけやのに、なんでそれがいえんねやろ。

中堅営業マン河村操がそんなこと言われたら、E店どころか、Y店Z店に到るまでとりまくるのに、人間なんて単純なのに、そんな事もわからんメタボ上司が幅をきかせているからほんとどうしようもない。

これと同じ上司がテレビに出ている警察にもいた。あきらかに覚せい剤をしよしている男に職質。何人かの警官がチャレンジしたがなかなか、口を割らない。そこに、女性のママさん警官登場。おとしのトメさんだ。トメさんが彼と話し始める。あなたの気持ちわかるよと言う感じから入った。あっというまに、その彼は覚せい剤使用を認めた。すごいなあこの人と思ってみていた。

彼女もそれを上司に報告した。「覚せい剤の使用を認めました。」よくやったなあ。さすがおとしのトメさんだ。という返事を誰もが期待した。そのママさんも、テレビを見ている視聴者も。

ところが、その上司の一言は私の予想を遥かに超える物だった。

「汗を異様にかいてたからなあ、使ってるのはわかってたよ」え〜である。え〜でしょ。違うでしょ。そんなんみんなわかってるやん。自分で言わすのが大事なんやん。それがだれもでけへんからトメさんが登場したんやん。そして、成し遂げたんやん。

トメさんは拳銃を持ってんねんでとやたら心配になった。

なんとかならないんでしょうか。この上司たち。もちろん、世の中には素敵な上司もたくさんいる。これらの上司の上司さんたち、なんとか、よろしくお願いします。部下がかわいそうすぎます。