上書き保存

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「人間そう簡単に変わるものではない」

何度も過ちを繰り返す人に対してこんな声がよく聞こえてくる。そういう部分もあるが、そうでない部分もある。後天的に身につける事は可能だと思う。営業のスキルは後天的なものだと書いた。(詳しくは過去記事を参照してください)

わたしは周りが見えない。気配りや心配りが出来ない。空気が読めないから、営業とか無理やし。とあきらめる事は決してないのだ。周りに配慮ができる人間になるためのプロセスを知っていれば、ものにする事が出来る。

やり方を知って、それを繰り返し行なえば、確実にできるようになってくる。持って生まれた感性で空気を読んですばらしい対応を本能的にされるかたもいるが、わたしのは後天的に身に付いたスキルだ。なので、その気があるなら誰にも学ぶ事が出来る。

それを私は上書き保存とよぶ。

習慣を形成するのに似ている。私には何せ悪い習慣やへんな癖がたくさんある。実は習慣や癖って意識を通らない。無意識で行なわれている。だからへんな癖がなおらないのだ。好き好んで改札の前で立ち止まって切符を探しまくる人はいないし、左手で右の大胸筋を触る癖をなおしたくない人はいない。

なおらないのだ。だから癖なのだ。

意識にないから取り出せない。そもそもあるかどうかも気づかない。なくて七癖だ。(ちなみになくて七癖の後に続く言葉は、あって四十八癖。すくなくとも7個はあるという意味)いちいち取り出せない。だったらどうするか。上書きだ。だからいい癖や習慣を上書きすればいい。

私の悪い習慣で一番問題だったのは鍵問題。いつも、車の鍵を探していた。家のなかでつねに探していた。どこにあるかわからない。出かける時にいつも鍵がない。それを探す時間でいったいどれくらいの時間を無駄にしたかわからない。

ついにそれを改善しようと思った。なにかの本で、それを21日間続ければ習慣になり労力がいらなくなると読んだ。やってみようと思った。鍵を探さなくてよいのならどれだけいいだろうか。

玄関の下駄箱の上に置く事にした。100円ショップでカゴを買って来て下駄箱の上においた。外から帰ってきて家の鍵をあけたら、車の鍵もついているキーホルダーをそのカゴに入れる事にした。

最初は入れるのを忘れた。そしてまた探した。でもがんばって続けた。徐々にカゴにいれる習慣がついて来た。そしてついにそれが習慣になった。実際何日かかったかわからないが今では意識する事もない。

鍵をカゴに入れないとなんて一瞬も思わないし、入れた記憶もない。出かけようと玄関に行き、カゴのなかを見れば確実に入っている。

何らかの理由、両手に荷物を持っていて、鍵を入れずに部屋に入るとする。なにか途端にむずむずする。体が何かに対して違和感を感じている感じ。何かし忘れている感じになるから不思議である。

そうだ、鍵だ。鍵をカゴに入れてないのだと思い出す。

習慣というのはそれほど便利な物だ。あれだけ探しまわっていた鍵がカゴに必ずある。そして一切の労力をつかわない。悪習慣の上に確実な方法で上書きされたのだ。

気配りや配慮も同じである。椅子を戻すときに少し持ち上げたほうが、音が鳴らず人にやさしいすばらしい方法であるという事を知る。その方法も知った。持ち上げて戻すだけだから難しくない。

それを21日間やってみよう。そのうち、そのまま押すなんて考えられないようになっている。もちろんその頃には労力を必要としない。そうやって、ひとつづつ、上書きして行く。100個やったら恐ろしい人間に変わっている。

労力もなしに、マザーテレサかお釈迦様。ガンジーレベルになっている可能性だってある。

ベテラン営業マン河村操は何個の情報を上書き保存されたのだろうか。