小さな約束は諸刃の剣

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諸刃の剣(もろはのつるぎ、もしくはもろはのけん)という言葉がある。今さら説明するまでもなく、使い方によっては非常に役に立つが、一方では危険を招く恐れのあるものの例えである。今日とりあげる、小さな約束、取るに足らない約束はこの諸刃の剣である。あえて使うことによって強烈な武器になる。まず武器。

お得意さんにセールスに行ったとする。商談が終わったあとでお互いの趣味の話になった。その社長は釣りが大好き。魚を釣るのはもちろん好きなのだが、それ以上に釣り道具が好きなのだ。特にそのなかでもリール(糸を巻き上げる機械)に目がない。リールのはなしになると俄然勢いをます。そんなときに軽く「ああ社長リールに詳しいのですね、たまに量販店行くのでパンフレットあったら見ときますよ」とちょっとした口約束とまでもいかない挨拶程度の約束をする。もちろん社長も、ほとんど記憶にも残らない程度で聞いている。

で次回行く時にお得意さんが住む地域にはない釣具の大型量販店に行った時にリールのパンフレットを片っ端からとってくる。その数は30にも50にもなる。それをドーンと持っていく。「なんやそれ」「リールのパンフレットです、このあいだ約束してたでしょ」見た瞬間社長の目はキラキラ輝く。それをさとられるのがいやなのか「おおそういえばそんなことゆーてたなあ、そこ置いといて、後で見とくわ」とそっけないが、そのあとの商談がスムースに運んだのは言うまでもない。

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いっぽうでそれが危険を招くことがある。小さい約束だからと反故にした場合だ。これが意外にやっかいだ。この小さい約束。言った本人は気軽に言ってるので覚えてないが言われたほうは、それがものすごく自分にとって興味のあることなら覚えているケースがままある。

話の流れで「わかったみとくね、連絡するわ」と言われる。まあ社交辞令かなと思いつつ連絡するって言ってるんだから連絡くらいくるだろうと思っているが待てど暮らせどこない。やっぱり社交辞令だったんだなあと思っていると忘れた頃にくる、こんどちゃんと連絡するから。ところがまたこない。

期待していないからいいんだけど、そのたびに期待するから、なんだかなあってなる。実はわたしは昔クライアントさんや友達にたいしてよくやっていた。今度連絡しますとか、また行きましょうとか。これらの約束は私の性格に根付いていて、断ったら悪いというのがあったからだ。その場で断るのが嫌でとりあえず、お茶を濁して受けてしまう。そして、勝手に、、まあ軽い感じだったからいいかとスルーしてしまう。こういうのが蓄積されれば間違いなく信用をなくす。

あるときお得意さんに言われた。「わかりましたおくっときますね」といつものように安請け合いしたある日「ありがとう、どうせ届かへんやろうけど、待ってるわ」って言われた。衝撃が体を駆け巡った。あ、おれやっちゃってたと。

それから考えを変えた。まず友達の誘いは行く気がなければその場で断った。「ごめん、それは興味ないからやめとくわ」冷たいやつだなあと言われても続けた。そして行くときは行くって言うことにした。そしてそれは必ず行った。クライアントさんのお願いも安請け合いしないことにした。「ちょっと待って下さいね、あるかどうか確認しますから」「いいいい、あったらで良いから」と言われても、きっちり確認して「社長申し訳ありません、それはないそうです」としっかり断った。

逆に利用もした。確実にあるものに対してはわざと安請け合いした「はいはい〜、送っときますね」と言って、しょうもないものでも確実に送った。それで信用を得た。

小さな約束は破ったって致命傷にはならないが、ボディーブローのように効いてくる。逆にこの小さい約束、きっちり行えば積み重なってやがてしっかりとした信用になる。私もまだまだ完璧にできているとは言えないができるだけきっちりしようと心がけている。安請け合いせず、しっかり噛み締めてうけたいものである。