恐怖政治をしいているラーメン店で白昼に起こった事件とは

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たまにいくラーメン店。

全国チェーンのフランチャイズ店だ。
いらっしゃいませ〜
お待たせしました〜
ご注文頂きました〜
お客様お帰りで〜す
と、いつも元気なお店だ。

その日も大きな声で迎え入れられ
席に案内された
「お客様、おひとりさまですか」
「はい」
「奥のカウンターへどうぞ」
いつもどおりアイドルタイムの2時に行ったので
店内はすいている
奥のカウンターに座る。

オペレーションのシステムからすると
まもなくスタッフが水を持ってきて
ご注文お決まりの頃に参ります
となる

ところが
その日はどうしたことか
こない
カフェやレストランで
このような放置プレーはあるけど
この店に置いては
そんなことはない
お客様は神様ですを
全面に出して商売しているからだ

注文は決まった
チャーハン定食だ
だから
きてよと
顔をあげる

この店のすごいところは
何か言いたいことがあって
顔をあげたら
誰かが気づき
「奥のカウンターのお客様およびです」
と声を出し
それをホールスタッフが拾って
すぐさま飛んでくる

ところがそれも今日はない
おかしい
しかたなく
すみませんと声をだす
まあまあ大きい声を出したが
きづかない

さらにボリュームを上げて叫ぶと
ようやく気づいた
客をまたしてしまった
この店ではありえない失態だ
(念のために書いておくが
客がのぞんでいるわけではないからね
店側が提供したくてしているのだから)

そんな失態をしてしまったと気づいたスタッフは
本来なら
申し訳ありませんって感じで
とんでくるのに

この日は違う
この店にはヤンチャっぽいあんちゃんが
大勢働いている
でもみな接客は丁寧だ
ところが

俺に気づいたやんちゃなあんちゃんは
やんちゃな感じで近づいてきた
つま先と膝頭を大きく開いたがに股で
よってくる

なぐられるのかと
思ったら
オーダーを取りにきただけだった
「なにしましょ?」

チャーハン定食をオーダー
いつもなら
くどいほど注文を繰り返しますってやるのだが
やらない

「チャーハン定食いっちょう〜」

とあんちゃんがいった
普通なら
スタッフ全員が
さけぶのに
それもない

おかしい

このお店でなにかが起こっている。
それに気づいた俺は早速調査を開始した
胸から手帳と
万年筆をとりだし
あたりを見回した
待ち時間に読もうともちこんだ
3月のライオン7巻に目もくれず

すぐに異変に気づいた
店長がいない
副店長もいない

なるほど原因はこれかとすぐにわかった
メモに取るほどでもないので
すぐにメモを閉じた

3人いたスタッフは
店長がいないから
気が緩みまくっているのだ

ただある程度の声はでる
毎日毎日言ってるから
習慣になっているのだ

でも
いらっしゃいませと
しっかり目を見ていったものの
習慣でやってるだけなので
客が注文をしようがどうか忘れている

オーナーだったら必死になる
お客さまが注文しようとしているチャンスを逃すはずがない
その意識がないから
当然簡単に忘れる

この店は徹底的に
接客の訓練をするというのを聞いたことがある
しつけも厳しいようだ

ところが
蓋を開けてみたらこんなものだ

チェーン店だが
フランチャイズ制なので
店によって若干違いがある
ここの店舗は
店長が怖くて
恐怖政治をしいている

だから店長がいるときは
みなビクビクしながら
大声を張り上げ
引きつった笑顔を提供してくれる

何かミスがあったら
厨房の奥に呼び出し
こちらに聞こえないように配慮した
とても良く通る声で
怒りまくっている

推して知るべしだ

恐怖政治は恐怖がなくなると機能しなくなる
店長もそして、店長ほどではないが
まあまあ怖い副店長もいないから
途端にこんなことが起こる

ラーメンの味はなんらかわらず
俺にしてみたら書くネタの提供をしてくれたので
何の問題もない

チャーハン定食をおいしくいただき
レジでお金を払う
800円の会計に対して
1000円を払う

それを受け取った
あんちゃんの手がとまる
どうしたのかなと思って
顔をみると
厨房をみて笑っている

厨房のふたりがくだらない話をして
盛り上がっているのを
うらやましそうに

まもなく
はっと我に返らないまま
200円のお返しですと
俺に手渡した

ドアをあけて外にでるとき
背中で「お客様おかえりです」
を待っていたが
予想通りその声はなかった

ありがとう若人たちよ
これでまた書ける