「みさお、おもろいやんけ」
知識と経験と言語力とプレゼン力を駆使して、目の前にいる人にわらってもらおうと、渾身のひとことを発する。
3割くらいかな笑ってもらえるのわ。全打席ヒットを狙っているがなかなかそううまくはいかない。それでも人に喜んでいただけるよう日々おもしろい話を投げまくっている。
そんな私の努力もあって、おもしろいことを言ったら笑ってくれる人がいる。先日は、なぜか突然、私の顔をみてクライアントがわらいだした。理由はわからないが、涙を流して笑っている。久しぶりに泣くほど笑いましたと言っている。
ほんらい、笑わそうと思って笑ってもらうほうが嬉しいので、笑われるのは本意ではないのだが、あれほど喜んでいただけるなら、これはもう充分世の中を幸せにしているなと思い、笑われるのもやぶさかではないなと思った。
そんなわたしは今日もおもしろい話をしようとしているのだが、そんな中、たまに言われるのが冒頭のセリフだ。
「河村、おまえ、おもろいやんけ」
という人もいる。私がおもしろいことを言ったらそういう風に言う人が、知り合いでふたりほどいるのだが、それを言われるたびに、
「ほんまですか、ありがとうございます。うれしいです」
と言いながら、腹の中では、おもろいんやったらすなおにわろとけ、評論家か、っちゅうねん、と突っ込んでいる。
なんやねんなと思う。このふたりは付き合い長いのだが、いまいち友達だと言い切れないのは、そういうところがあるからだと思う
お眼鏡にかなう的な
はいはい、わかりましたよ、あなたはおもしろい。俺が、それを認めようじゃないか。おい、お前、俺に認められるってのは、相当すごいんだぜ、俺はめったにいいねとか、やるなあとか言わないんだぞ、その俺が、言ってあげているんだから、喜べよ。
的なのが踏んだんに含まれていて、もう全然笑えないのだ。
ありがとうございますといいながら、腹の中で、評論家かっちゅううねんと突っ込んでいるからそれでいいのだけど、そういう人って多い。
なあなあなあ、俺ってさあ、なんでも知ってるやん?
だから、このお笑いがくるって知ってたんよ。コロコロチキンなんて、劇場にしか出てない頃からブレイク間違いなしって思ってたし、広瀬すずちゃんなんて小学校の時からくるってわかってたからね。
まあ、みさおは、もう50で今さらやけど、まあまあいけてるからがんばりとかいう。
あ、ありがとうございます、がんばりますと言ったものの、この人を追い抜くことは絶対にできないなあと思ったりする。
なんで、この人は、何でも知っているのだろう。できないことはないのだろう、その謎はまだ解き明かせていない。早速研究所に持ち帰り、調査にはいることにする。