日々ね、朝から晩まで、ビジネスってなんだ、仕事ってなんだ、働くってなんだ、生きるってなんだって考えている。
私が主催している河村総合研究所の現在の研究対象は『生きる』ものすごく壮大な題材だ。有能な哲学者が、答えを出せないまま死んでしまうこともあるようなものなおだから、ハードルは極めて高い。
生きるにおいて仕事はさけて通れない。
まず、その仕事ってなんだろうってのを日々分析しているのである。現在研究をはじめて4年経つが、どうやら、ビジネスに必要な能力は、この5つだなってのがわかってきた
観察して→記録して→分析して→理論にして→伝える。
この流れは絶対に必要になってくる。全てをおもてにだして、クライアントに提供していく場合もあれば、全てを水面下で進め、結論だけ伝えるってこともある。
いずれにしても、思考と伝達はこの順番で進むのである。
思考して、伝達するって流れでビジネスは進むのだが、ちょっと待ってって、今日歩いていて思った。
伝達ありきじゃねえかって。
伝達するために、よりよい、完璧な企画、提案およびアイデアを相手に確実に伝えることでしか、何もはじまらないのではないだろうか。今現在、私は数社の企業と個人のコンサルをやっているが、彼らが私に仕事を依頼してくれたのは、私が、こんなことを、こんな感じでしてるんですよって伝えていたからなのだ。
もし、私が何も伝えていなければ、いや、伝えようとしていても伝わっていなければ、仕事はひとつも完結していない。どうやって、伝えようかってところから考えたほうが、ビジネスは上手く進むのではないかと思った。
「あの〜、どっからきたかわからなくなりました」
イベントが終了し、会場の撤去が一段落したとき、我々の背後に、ただならぬ気配がしたので、振り返ったら、25歳位の男の子がたっていた。青白い顔をして震えている。どうしたのってきいたら、そのように答えた。
ここは兵庫県西宮市だけど、日本国内で地球上だけど、その青年は、どこか他の惑星からきたのかと一瞬錯覚するような言葉を発したのだ。おどろいた俺は、
「どっからきたって、しらんけど、あなたは誰だ」
と聞いた。すると
「派遣のアルバイトです」
と言った。それを聞いた、あいかたが、状況をくみとり
「ああ、派遣のバイトの子だね。どこで受け付けしたかわからんようになったんやな、そりゃそうだ」
と答えた。相方は、イベントには毎回参加し、リーダーで俺の先輩だから、状況を適確に判断して、彼の言っている意味をとらえた。それでも、それまでに、微妙なやりとりがあり、的をいない答えを、派遣の彼は連発した。
結局こうだ。
イベントは、なにもない芝生の広場に、テントやら、什器やらで会場をつくった。本部にしていたテントも仮説のものだったので、イベント撤去が終わったその時間は、すべて撤去され、芝生広場にもどったので、どこからきたのかわからなくなったのだ。
こういういいかたはできなかったのだろうか。
「すみません、アルバイトのものですが、2時にきたとき、タイムカードが設置されてあった場所に、自分の荷物を置いたのです。ですが、今、こういう状況でテントが全て取り払われ、芝生だけになったので、私がいったいどこからきて、どこにいるのかがわからないのです」
と。
見事に状況を説明している。しかも、ちょっとユーモアがある。そして、そりゃそうだよな、テントが何十個も張り巡らされているところにきて、今、こうなったら、迷子なるわなあってなり、すぐに問題は解決しただろうと思う。
その日は、多くのバイトの子とはなす機会があったが、もうすこし上手くコミュンケーションがとれれば、指示と受け答えの時間がはぶけるだろうなと思った。
もし、同じ問いかけに対し、半分の時間で理解する人がいたら、時給で人員をやとっている側からすると、大幅な経費削減になる。もちろん、これはアルバイトだけの話ではなく、社内の伝達力が、全体的にあがり、社内のコミュニケーションがよくなれば、その削減時間はとんでもないものになり、伝達力があがることにより、整理され、深い思考ができるようになった脳は、斬新なアイデアや、適確な判断ができるようになり、そちらの面でも、大きく企業に貢献することとなるのだ。
個人の資質も上がり、それが企業にも大きく貢献する。
ビジネスマンが、そして、会社が一番さきに鍛えるべきは、きっと、伝達力である、わたしはそんな気がしてならない。