先人の智恵

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ゴルフの飛距離アップにローキックがいいと言うのでやってみた。ローキックとはキックボクシングや空手の試合で相手の足元、おもに膝から下を狙って足で蹴るあの動作だ。どうしてもゴルフの飛距離が欲しい私はいいと思ったらとりあえずやって見る。

さいわい、通っているトレーニングジムにサンドバックあるので蹴りまくった。ものに当たる事に慣れていないスネが悲鳴をあげた。痛い。でも飛距離にはかえられない。我慢して蹴りまくった。

慣れてきたのか途中から痛さがましになった。よーしと思った私はさらに蹴りまくった。30分ほどサンドバックと格闘した私はそのあと少しトレーニングして帰った。翌朝、腰に激痛が走った。起き上がれないほどの痛み。理由がわからなかった。スクワットもしたのでその時か。いやでもフォームは正しかった。

接骨院に行った。一発で原因がわかった。ローキックだ。ローキックの反動が全て腰にきたというのだ。フォームが悪いからに他ならない。本末転倒。飛距離を得るどころか痛めて落としたかも知れない。本当に間抜けだ。

ところが良い事もあった。接骨院の先生から衝撃的な言葉を聞いた
「河村さん、腰もそうだけどそれよりなにより股関節がメチャクチャ硬いね」
「まじですか。股関節だけはやわらかいと思っていました」
「いや全然硬いよ」
と、先生は私の足を曲げた。それを見た他の先生が笑った。こりゃ硬いはと言ったふうだった。

ショックだった。股関節の使い方は熟知しているつもりだ。サーフィンでもゴルフでもスキーでもここの使い方で全然かわってくるからだ。私はそれを生徒達に自慢げに見せていた。いや使い方はいいのだ素晴らしい域にある。私がカンチガイしてたのは、使い方がいいから柔らかいと思っていた点だ。そうじゃない、考えたらわかる。使い方が上手いからそれが柔らかいという事にならない。

股関節の稼働域の狭さはおしりまわりの筋肉の硬さも多分に影響しているという事も聞きストレッチを教えてもらった。使い方を熟知している股関節をよりよく使うためにストレッチを始めた。効果がさっそくではじめた。おしりに引っ張られて捻転が制限されていたのか臀筋をゆるめるとバックスイングが深くなった。

嬉しくて知り合いに話した
「腰は痛めていたかったけど、でも腰を痛めなかったら絶対に気づかなかったよ、自分の股関節が硬いなんて。痛い思いはしたけどまあ良かったよ」
「まさに怪我の功名だね」
と言った。そうかとハッとした。

こういう事が結構ある。さすがにこの言葉はあまりにも有名なので知っていたが、そうでないときもある。なにかに出会い、何かに気づき、この理論はすごい世紀の大発見かもと意気揚々と話しているとそれを聞いていた博識な人が「酸っぱいブドウだね」とか言う。

これはすごいと思った事のほとんどが先人によって論理化されているのだ。気づく事はすばらしいが、あくまでも真摯に生きなくてはと思った。