神経が伸びて部屋中に行き届く

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シリーズで展開中の「新人河村操とベテラン河村操」(シリーズ名は友達がつけてくれました)は、同じ状況で新人とベテランがとる態度や方法の違いを書いたり、新人がどのように成長しベテランになるかを書いています。その成長の過程がおもしろいと好評を得ています。ありがとうございます。(シリーズが始まった時期場所は不明)

新人とベテランの違い。ありすぎて、とても一言で説明できるものではありません。そんな中でもこれはかなり大きな部分をしめるなという物をあげさせてもらいます。今後シリーズを読んでいただけるなら、そのあたりに着目していただければ面白いのではないかとおもいます。

新人になくベテランにあるもので最も大きいもの、それは経験です。壮大な経験がベテランをつくっているというのは間違いないでしょう。もちろんただ、経験しているだけではだめです。経験の中から得た知識を分析し、今後にどう生かして行くかを考えなければ経験は役に立ちません。それをふまえて使うとすれば、膨大な経験、残念ながらこれだけは新人に得る事はできないのです。

以前シリーズで、ベテラン河村操の話を書きました。(絶対にこれだけ売らないといけない時がある)ベテランは入った瞬間にその場の空気を察します。なぜこのような事ができるのでしょうか。それは、彼が圧倒的な量の経験を得て、それを分析検証し実行した結果です。その過程をあきれるくらいな繰り返す事によって、一瞬で判断できる強烈なスキルを得たのです。(年齢が高いというだけでリストラするということは、企業はこの資産を安値で手放すということになります。買い戻すとなると、いったいいくら払わないといけないのでしょう)

その過程は自動車の運転を例に出すと解りやすいかもしれません。例えば、そうですね。あなたが車を買い替えたとします。父親に買ってもらった軽自動車も、そろそろ古くなって来た。収入も増え普通乗用車も買えそうだ。よし、マーク2を買おう。(許して、昭和生まれのバブル育ちなので)

人気車なので納車まで2ヶ月たってようやく届いた。早速妻と買い物にでかける。怖い。でかい。いつも走り慣れていた道がとても狭く見える。あかん、左がぶつかりそうだ、あ、前から車が。前の車おまえもっと右によれよ。センターによりすぎやねん。あーすれ違いできるかなあ。

「こっちめっちゃ空いてるで」と助手席の妻。「えー、まだ寄れる、ぎりぎりやろ」「うんぎりぎり、1メートルくらいしか空いてないよ」いやな奴だ、思い切りばかにしている。ひとがピンチだとガンガンくる。50センチほど死ぬ思いでよってなんとか通過した。

みなこんな経験があると思う。車両感覚と言う。あたらしい車の車両感覚がまだ形成されていないのだ。どれだけの大きさで幅がどれだけあり、前の長さがどれだけあるのか解らないのだ。あきらかに大きいのは解っている。知識としては知っているが感覚になっていないのだ。

3ヶ月後。普通に運転するには問題なくなってきた。前の長さも把握し横幅も感覚として身に付いて来たので平気で左に寄れる。妻もなんにも言わず面白くなさそうに乗っている。車両感覚がこのようについてくる。これがもっと進むとどうなるか。車が自分の手足のようになってくる。自分の体から、手足が伸び神経が体から飛び出し車全体に行き届いているような感覚になる。

営業活動はこの感覚に非常に良く似ている。新人河村操の手足や神経は彼の体の中にだけある。自分のことしか考えられず、店での立ち位置、得意先社長との距離、店員さんとの距離、お客さんとの距離がまったくわからない。

それが少しづつ伸びてくる。徐々に周りが見えてくるようになる。そしてついには、ベテラン営業マン河村操になる。ベテラン営業マン河村操。彼の神経は店に入った瞬間にからだから飛び出す。何百本の神経が部屋中に一斉に放たれる。一つは天井のはし、一つは店主の目、店主の服装。従業員にも届く。一瞬ですべてを把握してようやく第一声を放つ。「毎度、ありがとうございます。○○の河村です。」

この判断を誤ると、商談を終えるまでに時間がかかったり、決まらなかったりする。まさに戦場。わたしは戦士ではないが、もしかしたら似ているかもしれない。適地に入り、敵のアジトのドアを開けるその瞬間。まちがったら死に至る。殺されはしないが、営業マンにとって売り上げがあがらないのは死にも等しい。

ベテラン営業マン河村操。得意先の前では笑顔を絶やさない。腰は低い。もみてはしないが気分はそんな感じ。さわやかな笑顔というより、へらへらしている感じ。何があっても従順な雰囲気満載。

そんな見た目とは裏腹に中身は戦場で戦う戦士である。企業戦士とはよく言ったものだ。

というふうな感じで新人河村操はベテラン河村操に、紆余曲折をえて育っていった。そんな感じがしています。もっと分析してみないとわかりませんが、大まかな流れとしては、そう外していないんではないでしょうか。