ひとり異彩を放つ女性スタッフは配慮のかたまりだった。

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とある施設の女性スタッフの話。

その施設のスタッフはお客さんより内部の上司に目が向いている。上司には最高の笑顔で答えるその人が俺たち客を見る時の顔は笑っていない。客に色目を使うくらいなら俺に使えと上司が教育しているはずはないだろうが、本当はそうなのではと思えてしまうほど客に愛想をふらない。

ほとんどのスタッフがそうなのでそれが教育なのではと思ってしまうのだが、もちろんその中にも数名とても素敵なスタッフがいる。彼女たちはとても気持ちが良い応対をしてくれる。そういう環境の中でそうなるというのは、もうおそらく彼女たちが本来持つ資質であろうなと容易に想像できる。20代30代の方がほとんどだが、20年30年そうやって生きてきた人がたまたまこの会社に入ったのだろうって感じだ。

その中のひとりに笑顔が素敵で最高の女性がいる。しっかりとお客さんの目を見てその人が何を求めているのかを汲み取るように話を聞き、それに応じてくれる。そんな素敵な彼女と施設の外で出会った。偶然出会った。

梅田の街なかを歩いていたら50メートルほど先から彼女が歩いてきた。すれ違う女性は全員を見るようにしている俺は彼女を見た瞬間、ん? どこかで、と思った。彼女もそう思ったのではないかなあという表情をした。

お互い一瞬目線を切ったあと、もう一度見つめ合った。見つめ合ったわけではないなあ、もう一度見た、だな。そこではじめて、俺はそれが彼女だと気づいた。制服を着ていないし、髪もアップにせず下ろしていたので気づかなかったのだ。2度目に目が会った時、彼女も俺がだれだか確認できたようで、いつもの笑顔で会釈をしてくれた。30メートルほどの距離だった。

会釈をしたあと、彼女は驚くべき行動にでた。両耳から垂れ下がっていたイヤホンの線を胸の前辺りで右手を使って鷲掴みにし、思い切り引き抜いた。右耳、左耳という順番で外れたイヤホンヘッドは弧を描き彼女の腰辺りに舞い降りた。彼女は胸から腰にイヤホンヘッドが落ちるのに合わせて掴んだ右手をぐるぐると時計回りに回し、イヤホンのコードを見事に回収した。

5メートルの距離になったときには再び会釈し再び笑顔で通り過ぎていった。

やはりこの女性が素敵なのは資質だな。知り合いに会うのにヘッドホンやイヤホンをしていては失礼だととっさに外したのだろう。そういえば、この間もコンビニで水を買おうとしていた女性がレジに向かう時にすれ違ったが、イヤホンを外しながらレジに向かったのを見て、ああ、まだまだ素敵な人が世の中にはいるなと思ったことを思い出した。

そんなことはあたりまえなのだが、それができていない人がとても多い。イヤホンを耳からはずす仕草にほれてしまうのは俺だけだろうか。

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