「じぇじぇじぇ」
少々表現が古いのをお許し願いたい。完全に乗り遅れて『あまちゃん』を見逃した私は、現在DVDで一気に見ている真っ最中。クドカンすげえと思いながら楽しんでいる。じぇの数が3つ繋がっているじぇじぇじぇは、相当驚いた様子なのだが、わたしは、目の前で起こっている光景に、こころの中でこの声を発せざるをえなかった。
大阪の中心地を囲むように走っているJR環状線というのがある。東京の山手線みたいな感じの路線だ。実家に帰るためにその電車に乗り込んだ。お昼の2時を過ぎたあたりだったので、車内はすいていたので、座席につくことができた。
大阪駅の次の駅、てんま駅で、コンビニの袋を持った20代後半に見える女性が乗り込んできた。女性は私の座っているのとは反対側のドアに一番近いところに座った。この電車は座席が両側にあるタイプ。進行方向には横を向いた状態で座る。なので彼女とは向かい合わせということになる。
彼女は背負っていたリュックをおろし、自身の左側のシートの上に無造作においた。車内は彼女を含めて8人ほどだったので、まったく問題はなかった。フーっと深い溜息をついた彼女は左足を持ち上げ右足の上に重ねた。
すると右手に持っているコンビニの袋から弁当をとりだした。弁当は遠くからでもひと目でわかった。とんかつ弁当だ。なるほど、コンビニの袋を持った人なんてやまほどいるのに、この女性の持っている袋が印象に残ったのは、弁当が入って、横に広がっている形状からかと妙に納得した瞬間、事件は起こった。じぇじぇじぇである。
彼女はフタをあけ、組んだ左足と組まれた右足が作った三角形の上に、器用に弁当をおき、これまた器用に右手と口で割り箸をわり、とんかつをひとつ口にほおばった。
すごいな大阪と瞬間的に思ったが、原因が大阪でないことにすぐ気付き、すごいなこの娘ってなった。またたくまにニオイが車内に充満し、車内にいた何人かは、そのニオイの元に顔を向け、そこにある光景におどろき、二度見する人もいた。
おいおい、すごいなあと思った瞬間、ちょっと待てよとなった。
これって、あかんことか。そう私は思い始めた。あまりの衝撃に、反射的に、おい、それは駄目やろうと心のなかで全否定したが、すぐに、それって、これって、ほんまにあかんことなんかと思った。車内で弁当食べるってあかんの。じゃあ、新幹線はどうなるの、特急サンダーバードで、ガンガン弁当を食ってた俺はあかんのか。
いやいや、そんなことはない。だって、新幹線は車内販売している、だから弁当はくっていいはずだ。だったら、在来線の各駅停車だっていいのじゃないのか。特急はいいのか、急行は、もしかしたら、規定に書いているのかも。
いったん問題があたまに浮かぶともう離れられない。目の前でバクバクとんかつ弁当を食っているこの女性は無実かも知れない。一般常識というなの主観でこの女性を犯人としていいのかと、そう思った。いてもたってもいられなくなった私は、このことについてJR西日本に取材しようと決めた。そして、まず大阪駅の案内所に行った
「すみません。わたくし、コミュニケーションに関するメールマガジンを書いていますライターの河村と申します」
と言って名刺を差し出した。
そこは案内所だったので名刺を出す人間なんていないのだろうか、戸惑った様子で
「どういった、ご用件でしょうか」
と言ってくださった。そこで私は、社内のマナーやエチケットの規定について取材をしたいのだが、どこにいけばいいか尋ねた。すると、女性社員のかたは連絡をとってくださった。そして、そういった要件はここに連絡して聞いてみてくださいと、連絡先の書いた紙を渡してくれた
丁寧に対応してくださった女性に丁寧にお礼を言って、さっそくいただいた番号に電話を入れた。
お客様相談室に事情をはなすと、それについては『きくぞう』という部署があるので、そこで対応しましょうと電話を回してくださった。そして、担当のまついさんに思いの丈をぶつけた。
完璧な回答をいただいた。
まず、車内の飲食に関しては基本的にオッケー。特に新幹線だからいいとか、在来線だから駄目だとかいうことはありませんと。ただ、車内が混雑しているときや、人が近くにいて、ニオイが強くて、他のお客様の御迷惑にならないように配慮してくれということは言っていると。基本的に禁止ではありませんということだった。
私は心のなかで速攻あやまった。一瞬でも、おまえ何してんねんと、彼女に対して思ったことを詫びた。申し訳なかった。そうなのだ、車内には8名しかおらず、とんかつのニオイなどたかがしれていることを考えると、彼女の食事は完璧にオッケーなのだ。
逆に新幹線で551の豚まんとシュウマイを食べながらビールを飲んでいる人のほうが、ニオイをまき散らしているという意味ではアウトである。
まあでも、これはあくまで規定の上ではということなのと、在来線がこのような状況は非常に少ないので、少しでも車内が混みだすと、まあ不可能になるだろうし、新幹線で豚まんを食べる人にダメよということはできないだろう。
結局、これが判明したからといって、環状線の車内でお弁当を食べる人が増えるとは思えないが、いちおう、JRの見解はこのようだったと記しておく。
最後に付け加えておっしゃった。もし、他の乗客の方が食事をされていて、それを不快と思ったなら、遠慮なくおっしゃっていただきたい、それに対応する準備はありますのでと。
このブログを書いて随分たつが、取材をしたのはおそらく初めてだと思う。疑問があり、あれこれ考えてもわからない時は、取材の方が早いんじゃないのとずっと思っていたのだが、なかなか行動におこせなかった。
取材して思った。非常に丁寧に対応してくださる。こちらがどこの馬の骨ともわからないのにだ。これを機に色々聞いていくのもおもしろいなと思った。みなさんはどう思われただろうか。
まついさんは、このことをブログに書いてもいいですかとお聞きしたら、はい、どうぞとご快諾くださったことを最後に足しておく。