3年前に仕事を辞めるまでの22年間、営業活動に伴い、毎日車を運転していた。月間の走行距離は平均で4000キロ、年間で50000 キロ弱の走行はそのへんのプロドライバーも真っ青のすごい数字だ。
高速道路も毎日利用していた。その中での渋滞学。渋滞については色々な意見や考えがあるが、あまり取り上げられてなくて、ひとつの大きな要因となっているものに、右側車線の常時走行というのがあると私は思っている。
仕事で週末も運転することがあった。実はこの週末の高速道路が非常に運転しづらい。理由はひとつ、そこにサンデードライバーと呼ばれる一般の車が現れるからだ。誤解しないでいただきたいのだが、サンデードライバーが全員が原因というわけではない。きっちり運転されている人もたくさんいる。ところが、ウィークデーにはほとんどいなかった、ルールを違反する人が大量に週末には発生するので書いたのだ。
道路交通法の中に、右側の車線は追い越し時にしか利用してはいけないと明確に示されている。にもかかわらず、週末にはこの右側の追い越し車線をずっと走る車が大量に発生する。
もちろん、車の量が増えて、左側に車があふれ、仕方なく右側をというのは何ら問題がない。私はそういうことを言ってるのではない、左側に車が走るスペースがあるにも関わらず、ずっと右側を走っている車があるのが問題だと言ってるのだ。これは、あきらかに道路交通法違反である。これが理由で違反切符を切られた方も多いだろう。私は交通ルールを守って運転する優良ドライバーだと思っているかたが、知らずに右側を走り続ける。これが違反だと知って、ショックを受けている人もきっといるだろう。
そう右側はあくまでも車を追い越すために一時利用する追い越し車線なのだ。なんとこれは一般道路にも適用されるルールだというのだから、さらに驚きだ。実は、この右側走行問題、ウィークデーにはほとんど発生しない。プロドライバーは法律的にか本能的にか、これを知っていて、ほぼ100%に近い人が常に左側を走っている。そして前に遅い車がいる時にだけ右側の車線を使って車を追い越す。そして追い越したらすぐ、左側に戻る。
このリズムがとても心地よいのだ。一般的にトラックが多いと怖くて走りづらいと言われるが、実際はそんな事は全然ない。私は、右側を常時走る車がわいてくる週末のほうがよほど怖い。
これが週末特有の渋滞を生む。本来追い越しのために空いていないといけない右側車線が車であふれ、走行車線が逆にすいている状態が現れてくる。これは週末の特徴だ。もちろん、車の数が限界を超えると、右も左もいっぱいになるのだが、その前の段階が非常に違和感がでるのだ。
理由もわかっている。本当は走行車線を走っている前の遅い車を追い越すために右に出た後左に戻りたい人もいるだろう。ところが、右側が詰まっていて、左に戻れば、今度前に遅い車がいたときに右側に入れない、または入れてもらえないという事が起こるからだろう。
実際週末に、この本来の正しい動きである左側キープ、そして追い越す時に右にという走り方をしていると右に左にといたずらに車線変更する迷惑なドライバーに映ることすらある。そちらのほうが正しいのにそう見えないのだ。これらの要因で、車があっというまに右側にたまってくる。すいている走行車線をしばらく走って、前に遅い車が出現したらもう右には戻れない事が起こる。
ウィークデーはそれが一切起こらない。そのリズムは見事ですらある。走行車線を走っていて前に自分より遅い車がいる。それに気づいたドライバーは右側に車が来ていないのを確認して右に指示器を出す。そして進路変更して抜かしたら左に戻る。
これがすごいのはさらにその先である。もし右側に車が迫ってきてなかったら何の問題もなく追い越しができる。だが、追い越そうとする時に右側に速い車が迫ってきたらどうするか。そうです、もちろん、その車が自分たちを追い越すのを待って、その後に右側に出て追い越す。それが通常だ。ところが、そこでプロたちのやりとりが見られる時がある。
右側を後ろから走ってきた車の目線で見てみよう。わかりやすいので夜にする。右側を走ってきた車は左側の前にトラックがあるのに気づく。前の車が遅いので、その後ろの車が前に追いつき、それを抜きたがっているのを感じる。自分は右側を走っているが、まだ先なので、おそらく左側の後ろのトラックが、前のトラックを抜くために右に出ても、自分に影響を与えない、もしくは少し減速すれば、彼が追い越す余裕を与えることができる。その時に、なんとこの右側を走っていたトラックはヘッドライトを消すのだ。
(写真はイメージです)
次に左側で前のトラックを抜きたがっていたトラックドライバーの目線でみてみよう。前のトラックが遅いから抜こうと思う。そして右側をみる。すると後ろからトラックが走ってくる。タイミングとしては微妙だが、右側にでることで、後ろのドライバーを邪魔することになるので、彼が過ぎるのを待とうとする。すると、そこでサインがでる、そう、先ほど消したヘッドライトのことだ。それは右側のドライバーからのメッセージなのだ。
まだ充分距離があるよ、あなたが右側に出て前のトラックを抜いても私に影響は出ないから、どうぞ出なさい。そのサインを見たドライバーは、おお、なんとありがたい、それではと急遽右側に出て前のトラックを追い越すことにする。
追い越すために右にでたドライバーは、譲ってくれた後ろのドライバーにハザードランプを点滅させてお礼を言う。抜こうとしてた車は減速する必要がなかったので、スムースに抜くことができた。右側のドライバーの減速はほんのすこしだったとすると、これは地球環境的に言ってもエコなのだ。
実はこのすばらしい話はこれだけに終わらない。なんと、一番前にいた抜かされたドライバーもこのドラマに参加する。前の遅いトラックはサイドミラーで、この一連のやりとりを見ているのだ。そして自分も協力する。
実はトラックは長いので追い越したあとかなり余裕を持って元の車線に戻る。ギリギリで元に戻って抜かされた車のすぐ前に入ったら危ないし、あまりいい気もしないだろう。でも、抜かしたトラックは、後ろの道を譲ってくれたドライバーのためにもいち早く左に戻ってあげたい。そこで、一番前のトラックがドラマに登場する。
抜かされたトラックは抜かしたトラックの一番後ろが自分のトラックの一番前を過ぎた瞬間にヘッドライトを消すのだ。それもサインだ。あなたは、もう充分私を抜きましたので、すぐに走行車線に戻っていいよ。もう大丈夫ですよと。
そうすることによって、抜いたトラックはいち早く走行車線にもどることができるのだ。抜かして元に戻ったトラックは、ありがとうとハザードを点滅。その結果道を譲ったトラックは最短の減速で、2台を追い抜くことができるのだ。
いかがでしょうかこのやりとり。夜の高速道路ではこうやってコミュニケーションをとりながらプロのドライバーは効率よく走っている。渋滞は減速から始まる。高速道路を走っている車の総減速量を最小にすることによって、彼らプロドライバーは渋滞を回避し、安全を確保しているように見える。
トラックが多いと走りづらいというのは半分しかモノゴトを見ていないように見える。ウィークデーの夜に高速道路を走ることがあったら一度観察してみていただきたい。とても心地よいドラマが展開されているから