部長が好まない緩いスタイル

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ルートセールスだからです。

私の勤めていた業界は一度取引してもらうと、よほどの事がない限り永遠と続きます。1回入れておわりというセールスではありません。先日部長に怒られた中堅営業マン河村操はいったいどんなセールスをしたのでしょうか。

実は彼、新人のとき、ものすごく落ち込んだ経験があります。(詳しくはこの記事で書いています。)入社から3ヶ月たち、提案する商談がことごとくきまるので、有頂天になっていた時期です。いま、そのときを思い出すと、恥ずかしくて穴があったら入りたいほどです。

結局その社長は、私の提案がよかったから取ってたのではなく、私がなくなった弟さんに似ていたからという、落ちにもならないような理由でした。毎月商談して買っていただいてたので、倉庫は在庫の山になっていました。売れないのに買ってくださってたのでした。

その店舗での商談は即中止しました。その後半年間一切、商談しませんでしたが、在庫が切れる事はありませんでした。それほど大量にあったということです。かなり落ち込みました。提案能力、分析力、論理的思考の集大成で打ち出していた提案書、それにプレゼン。すばらしかった。だけど、とった理由は弟似。なんじゃそりゃです。

その後しばらく落ち込みました。とはいえいつまでも落ち込んでばかり居られないので、どうすれば良いか考えました。そして、ようやく出た答えが、売り込まない事でした。ただ、私は営業なのでノルマがあります。物を売ってなんぼの生活をしているのです。売れません、売りませんでは話になりません。

こたえは単純でした。向こうからうちの商品を欲しくてたまらない状況に持って行けばいいんです。その方法とは店頭で消費活動の活性化です。それを徹底的に維持するんです。今となっては当たり前ですが、当初はいかに店に商品を買ってもらうかばかり研究していました。商談話法やプレゼン。これだけ買ってもらったらこれだけ安くなるとか、これがつくとか。

今から考えると本当かなと思えるほど単純ですが、当時、その事を声を大に訴える人はいませんでした。お得意さんの弟さんに激似の新人営業マン河村操は、そのことに気づいてからいかに店頭から商品をなくすかを徹底的に考えました。

先日部長と同行した店舗をモデル店に決めました。その店で一切の売り込みをまずやめました。店頭にある商品と倉庫にある在庫を使って店頭にならべました。魅力的なPOPをかき、商品販売のイベントも行いました。商談もいかに買ってもらうかの商談ではなく、こういう消費者を対象にこういう演出をしましょう。DMを出しましょうと提案しました。

最初は上手く行きませんでしたが徐々に結果が出始めました。するとどうでしょう。注文がばんばん入ります。「社長、A商品の在庫がなくなりました。1ヶ月でこれだけ売れたので3ヶ月分注文しときますね。」「了解」

売り込んでいますよね。商品を買ってくれと提案して、商品を買ってもらっていますよね。完全に商談しています。でも、社長は部長に「この子は売り込みを一切しない」といったんです。

ここでの結果が大きな自信となり中堅営業マン河村操は自分のスタイルを確立し、どんどん結果を出して行きました。

ある事件をきっかけにそのスタイルを崩す事になるひまでは。