「ありがとうございました。とても勉強になりました。コンサルの件、また連絡します」
ていのいい、断り文句だというのは私にもわかる。セミナーのあとに、こう言って帰っていった参加者。セミナーではなした話は一般論です。個別に落としていくにはコンサルという形がいいですのでもしよかったらという一言で、セミナーをしめる。
すると律儀にこう言って帰ってくださる人がいる。とても丁寧なかただ。嫌味ではない、ここまで相手の気持ちを考えて、この場を立ち去れる人はそういない。
もちろん、それが社交辞令とわかっているので、連絡はくるはずもないのだからと、待ちも、セールスもしない。
ところがだ、
「ありがとうございます、めっちゃよかったです。来月はちょっとたてこんでいるので、再来月からコンサルお願いしようと思っていますので、どうぞよろしくおねがいします」
明確な日を伝えてくれる。頼んでもしないのに頼んでくれる。社交辞令にしてはあまりにも期待をもたせ過ぎだ。結局この案件は、成立しなかったが、これは失礼極まりない。相手に期待をもたせているのでまず罪である。これを社交辞令とするのは、常識がなさすぎる。その気がないのなら、また連絡しますでいいのだ。
こんなやつらが非常に多い。
そいつらとは、そのあとも付き合いがあるが、仕事の依頼とかはもうないなあと思っている。依頼されて、準備しても、なくなってしまうってことばかりだからだ。
これって、この感覚って、知ってるなあと思った。そして思い出した。そう、営業マン時代のクライアントさんたちの言葉だ。
彼らは、立場が上だから、平気で約束を反故にしてくる。
「社長、では24日の納品分の商品、本日発送しますね」
「ああ、あれか、もうええわ」
「と申しますと」
「いらん、キャンセル」
「しゃ、社長〜〜〜」
みたいなのがしょっちゅうある。これは別にいい。よくないが、相手はクライアントさまさま、彼らがいないと、おまんまの食い上げだからだ、神様みたいな人たちだから、そんなことは朝飯前だ。
それと同じことを、友達とか知り合いの、同業のフリーランスにやっちまう。その仕事の案件がどれほど、期待させているかも、わかっているはずなのに、平気でやる。そんなことしてるから、やがて信用はなくなり、仕事がなくなってくる。
俺もクライアントさんから、だれかヘッダーのデザインできるひと知らん?って頼まれることがある。そんなとき、そいつの顔が一瞬浮かぶが、そいつに頼むことはない、他の人に頼んだ。
そういうことだ。
人とは真剣に関わらないといけない。適当にしかできないのなら、関わらないことだ。
私は、残念ながら人と関わるキャパがすくない。約束履行能力も低い。だから、キャパがいっぱいになったときは、家にこもる。外に出ると、約束事項や、依頼や、誘いがあるからだ。今抱えている案件を処理して、手元の手帳のタスクがなくなったら、また出向いていくことにする。
遊びの誘いもことわる。忙しい時は、うけない。その場で速攻断ったら、かなり嫌われるが、しかたない。考えておくといいながら、ぎりぎりまで返事しないのはかえって迷惑をかける。
営業マン時代、たくさんの約束と案件をかかえ、結局ほとんど処理できず、とんでもない事態になったことがある。
今はその反省の上にある。約束不履行するくらいなら、おこられても、今は約束できませんと言ったほうがいい。嫌われる、怒られるより、約束不履行は罪深い。
逆に言うと、約束を完全履行するのは大きな武器になる。社交辞令もおあいそも含めて、徹底的に守る。そんなことやる奴はいないから、大きくライバルを抜きん出ることができる。
営業の研修を現在やっているが、クライアントにはそれを徹底履行させている。どんな小さな約束も100%履行してください。それでえた信用は参入障壁が高く、誰もはいってこれませんからと言っている。
フリーランスで、生きていこうと決めたなら、まずやるべきは徹底した約束履行。これができないのなら、仕事なんかくるわけないよ。