うどん屋で出会った青年

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うどんが大好きなんです。

今はやりのセルフの讃岐うどんやが出来てから、週に2回はうどんを食べます。

完全にセルフのそのお店はうどんを注文し、欲しかったら天ぷらを注文し、これも欲しかったらおにぎりを取って、レジに向かいます。レジでお金を払ったら、トレイに乗せたうどんとおにぎりを持って席に向かいます。

席に向かう前に薬味と水が置いてあるコーナーに行きます。そこもセルフサービスです。いつも注文するかけうどんに、ひとあじを加えるためねぎと天かすを入れます。取り放題、無料です。いつもはネギも天かすも、てんこもりにしてあるのですが、その日は忙しく補充が追い付いていません。どうもネギが、前の人が入れたらなくなりそうです。なくなったら、「ネギないよ~」と声を張り上げればいいだけなので問題はありません。

前の人は、その最後のネギをすべてさらえ、自分のどんぶりにいれました。次は私の番です。従業員のほうをみて、ネギないよと言おうとしたときです。その学生風の男子が、ネギが入っていたかごを持って従業員のほうに歩いていきました。

厨房まで行った彼は、ネギがないよと言っています。従業員は軽く会釈をして、ネギがやまもり入ったカゴをその彼に渡しました。彼はそのネギを持ってきて、ネギが本来あった場所に置きました。置いてあったトレイを持ち席に向かいました。

あっけにとられて茫然としていた彼の背中越しに「ありがとう」と声をかけました。彼はふりかえり、ぺこりと私に頭を下げました。

こんな人がいるんだ。感動しました。彼がネギをもらいに行く義務は一切ないんです。うどんもはやく食べたいだろうに。もし私が同じ立場だったら、同じことをしただろうか。おそらくしていない。よかった、ネギ残ってた、くらいの感じだったでしょう。

はずかしいことに、彼が自分のどんぶりにネギをいれるかどうかを、おい、少年、ネギ入れんなよ、なくなるから。と思って見てました。なんやねん、俺。はずかしくて、情けないです。

確証バイアスですね。若い今風の青年がそんなことするわけない、という固定概念で見ているんですね。だから、驚いた。

次回、そういうチャンスがあったら絶対に同じことをしようと心に決めました。まあ、そう簡単にはチャンスは巡ってきません。