全仏オープン2017の4回戦のファーストセット。錦織は1ゲームもとることなく6−0でこのセットを落とした。
3回戦のチョン・ヒョン線も格下相手に苦戦を強いられた。怪我の影響もあり、錦織の全仏は終わったかのように思えた。多くの人が思ったに違いない。相手のベルダスコはクレーのスペシャリストとも言える選手でクレーの試合では必ず上にあがってくる。6−0ということは圧倒的不利なレシーブの状況で3回も勝つことになるのだからテニスの6−0は相当の差ということになる。見るのを辞めてチャンネルを変えたくなるような感じだった。
ところがそこから錦織は驚異的な復活を遂げる。別人のように試合をコントロールし深いボールを相手コートの右左に打ち分ける。チャンスがくるまでは何度だって打ち合うぞという風にラリーを続け、チャンスボールがきたら強く早いウイナーをクロスにストレートに打ち込んでいく。
特に4セット目は神ってた。まったくミスがないように確実に相手のコートの奥深くに球を運ぶ。デルポトロは何もさせてもらえない。錦織が調子いいかどうか判断する時にバロメーターにしているのは姿勢だ。調子がいい時の錦織は踏ん張っていない。
スポーツは腰を落として足を広げいつでも左右に動き出せる姿勢をやたら賞賛するがそうではないと思っている。調子がいい錦織はスタンスが狭くポジションが高い。スッと立っている印象だ。スッと立っているので肩が下にさがっている。リラックスしているので重心が身体の中心である丹田付近に集まっている。
その姿勢からボールに対してフッと動き出す感じだ。踏ん張っていないから一歩目が速い印象だ。疲れはあるだろうが、この試合を機に自分を調整する能力とどうしたら調子がいいかを知りコントロールできればランキング1位のマレーを破る大金星がみられるかも知れない。準々決勝は今夜。