高齢化社会を支えあって生きていく

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「きょう、なんか膝痛いわ、もってええ?」

四条河原町の高島屋に向かうために、人の波をかき分け四条通を烏丸から河原町のほうに向かって早足で歩いていた。最近できた東急ハンズの前あたりで人の数が増え、人の流れがさらに緩やかになった。

わたしは向かいからくる人をよけながら80代前半と思われるカップルの横を体をひねりながら抜き去ろうとした時に、女性のほうから男性の方に向かって声がでたあと、女性は男性のだらんとのびた右腕に左腕を絡めた。

「ああ、おじいさん、だいぶらくやわ、ありがとう」
足をひきづるような仕草は見せなかったが、辛かったのか、発せられた声はか細かった。
「おお、持て持てなんぼでも持て」
力強く言ったおじいさんは、胸を少し張っておばあさんを支えるため気合を入れたように言った

「ありがとう、おじいさん、おじいさん杖やな」
「え〜、はは、おじいさん杖か」
「うん、おじいさん杖や。なんや、安心する」

おいおいおじいさんおばあさん、やめてくれへんかな、前が見えなくなるやんけ、取引先に納める贈答品を買いに行くために気合入れて歩いてんのに。春の匂いがしてきた若干暖かくなる京都の街の昼さがり。なんとも素敵な後景を目にして、心も暖かくなった。

昼のランチ会で男女は脳の作りが違うから簡単にはわかりあえないんだぜと力説した自分をはじた。こんなすてきな夫婦がいるんだ。

ますます切実となってくる高齢化社会。15年も立てばわたしも仲間入り。自分たちで生きていけるよう、しっかりと手綱をしめなおし、デパートへ急いだ。