サラリーマン残酷物語。セールスマンみさおが終わった日。

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22年と2ヶ月
上司に媚を
クライアントに魂を
お客様に商品を
うりまくってきた男
セールスマンみさお
です。

人は必ず何かを売っている。
売るに困ったとか
売れないとか、
セールスに関するご用命ご相談は
なんだってどうぞ。

売るのなんて簡単です

どんな形でもいいというなら、売ってこいと言ったら売ってきますよ。簡単です。

人間関係ができている人に、どうしてもこれを買ってもらわないと困るんです、助けてくださいって言えば、10人に2人くらいは助けてくれますよ。仲の良いクライアントとか友達とか、親とか親戚とか。

ただそれって、最後の手段ですね。

完全にこちらの都合です。いくら、その商品が、その人の役にたつ、必要なものだと思っていても、実際にそうであったとしても、こちらの都合でしかないのです。そんな売りかたがいいわけがありません。

もうその人との関係は遅かれ早かれ、崩壊します。集客できないセミナーに個別でメッセージ送るのも、要熟考です。頼む相手が、頼まれたら断られないタイプならなおさらです。

その人は、無理して受けてくれる可能性があるからね。

もちろん、友達のふりをしていただけで、そいつは見込み客だったんだよ実は、今まで仲良くしていたのは、商品を売るためだったのだよってなら別ですよ、助けてくださいよと頼めばいい。そいつが使いものにならなくなったら、また友達のふりをして、見込み客を増やせばいい。

関係ねえよ、売れればいいんだよってのであれば、それでも全然いいですよ。

簡単でしょ、そういう意味では、だから売ろうと思えば売れるのです。

延々と新規客

商売的にいっても、人道的にいっても、このやりかたって効率が悪いよね。

最良の関係を築いていた人に、むりやり売って、その関係を壊すわけですから。

昔こんな事があった。

毎月毎月ノルマに追われるのをなんとかしようと、長期の計画を立てて、主要なクライアントさんには年間の商談を一括でお願いしていた。業界の慣習で、そういう商談をするセールスも、それを受けるクライアントもまだ少なかった時代だ。

そのときに、わたしはそれをやった。

「社長、この注文は来月の末に納品しますね。あと1ヶ月は確実に在庫はもちますし、今月より来月のキャンペーンのほうが好条件ですからね。来月の末に出荷しますね」

月末に数字に追われていたら、まちがってもはけないセリフだ。その店に関しては、何ヶ月もかけてその関係を築いてきた。無理に入れようとしないので、クライアントはムダな在庫を持つ必要がない。

自分のことばかり考えていないということがクライアントに伝わり、こいつは信用がおけるとなっていた。関係を築いたことで、商談そのものの負荷が少なくなった。

クライアントも商談ごとに、こいつ、数字が欲しいから、多めに押し込んでいるのではないのだろうかとか思わなくてよくなり、圧倒的に商談が短くなった。提案に対してほぼオッケーがもらえるようになった。

その日も、その月と翌月の商談を終え、帰った。

そのあと、めんどくさいことが起こった。

上司からの命令は絶対だ

「セールスマンみさお、ちょっといいか」

もちろん、ニックネームでよばれることはないので、河村ちょっと、ってよばれたのだが、よばれた。課長の座っている席の後ろに会議室があり、そういった課長は、先に入っていった。

その部屋によばれるときってろくなことがない。同僚や先輩は、肩をすくめたり、ニタニタとうれしそうに、俺の顔をみたりして、いってこいと、目配せをした。

「失礼します」

課長はいきなり本題にはいった。

「セールスマンみさおさあ、今日売上報告あげてたドラッグ金星あるだろう」
「はい」
「そこの来月の売上っていくらだった、月末に納品する分だ、報告にあげてただろう」
「ええ、200万円です。来期の風邪薬です」

そういうと、そっかと言って課長は続けた

「それって、今月に納品ってできないか」
「えっ、どういうことですか」

おいおいおいおいおいおいおいおい、勘弁してくれよ。それは絶対やらない約束だったでしょ、それはだめですよ、それいっちゃあとセールスマンみさおは思った。

こういうことだ。

セールスマンみさおの、今月のノルマは達成している。だから、その200万を来月の売り上げに回すことができるのだ。ところが、チームの数字が足りない。だからそれを回してくれというのだ。いったいどれだけの時間をかけて、このサイクルにしてきたと思ってんだよ、あんたのポリシーじゃなかったのか、先に先にしかけて、スタートダッシュをよくすればいいサイクルになるからと。
セールスマンみさお
そうやってきたのに、それが全部崩れるってことだよ、わかってんのかてめえ、と思った。

「いやいやいや、無理です。さきほど、来月の納品日も決めてきましたし。せっかくいい流れができているのに、それが崩れます。信用もなくなりますから、無理です、というよりいやです」

ふざけんなよと思った。自分が上からのプレッシャーに耐えられないだけやないか。方針を崩すようなことするなよと怒り心頭だったが、結局、俺が首を縦に振るまで、帰らせてもらえず、組織だから上の命令はきかないとチームが崩壊するとか、正論にもならないような理屈をもってきて、しかも、うっとうしいのは、俺が頼まれたら断らないのをわかっていて頼んでいるところだ。

おれは、それをやむなくうけた。

次の日にお得意さんに行って頼んだ。信頼関係ができているので、一瞬で、変更をうけいれてくれた。みさおが頼むのだったら、なにか事情があるのだろうから、いいよ、送っておいてと言ってくれた。

涙がでた、お得意さんのやさしさに、上司の馬鹿さに。

変更の承諾の報告を電話で上司にしたら上司は、ありがとうよくやったとよろこんだ。これで、部長におこられなくてすむよってな感じだろう。まあ、数字のプレッシャーは半端ではないので、ちょっとはわかるのだが、これが、もう、この瞬間で、何もかも終わるのをわかっているだけに、ものすごくむなしい気分になった。

翌月の会議

セールスマンみさおの200万円のおかげでなんとかチームは目標を達成した。

会議の冒頭、みさおが200万円を前倒ししてくれたおかげで、チームは目標達成しました、みさおに拍手という課長のあいさつで始まった。目標達成しなかった後輩は、申し訳なさそうにペコリと頭をさげた。いやいや、そんなのは気にするなとみさおは目配せしながら、拍手にたいして頭をさげた。

その後輩にはつみはない。毎月達成する人もいないしタイミングというのがある。わるいのはそれを利用する課長だ。満面の笑みでみさおをみて、両手をつきだすようにしながら拍手しているが、本心は自分が助かってよかったというものしかない。

で、いつもの様に会議がすすむ。当月をどうやっていくかを話し合う。そして、最後に、今月の手持ちの売上を報告する。スタートダッシュが大事だからと、課の方針で、前倒しで、売り上げをあげようとやっているから、みな手持ちがある。

もちろん、わたしはゼロだ。200万円を先月にだしたからね。先月はくるしかったから、みなそんなにないだろうと思っていたら、目の前で恐ろしい光景が映し出された

「じゃあ、吉田係長(仮名)から順番に」
「はい300万円です」

吉田係長からおどろくような数字がでた。みなからおおという声があがった、課長もおおといったあと

「どこのお店?」

とうれしそうに聞いた。なんやねん、吉田さんはださんでよかったんか、うれしそうに数字をかきとる、課長の頭頂部に怒りを覚えた。そして順番に数字が報告された。

100万円です。50万円です。20万円です。200万円です。

おいおいおいおいおい、どうなってんねん、みんなは出してないのか。出せなかったのか。ちょっとまってくれよ、なんか違うぞと思っていたらみさおの番がきた

「セールスマンみさおは?」

おいおい聞くなよ、みさおは先出ししてくれたからゼロやなって言えよと思ったが、いちおう流れがあるので聞いたんだなとあきらめ

「ゼロです」

と答えた。するとなんとあろう課長は

「ゼ、ゼロ?」

と言った。おいおいおいおいおい、ちょとまてよこのやろう、怒りが一気に吹き出し、下からあがってきた、てめえこのやろうふざけんなという言葉が声帯の手前まできたとき、課長が

「ああ、そりゃそうだな、だしてくれたものな」

と言った。その顔に笑顔はなかった。そうやねん、その顔やん、あれだけ頼まれて協力しても、その瞬間だけや。それがあるから、俺は頑なに拒否したんだよ。もう完全に立場は、逆転。

熱い思いで、チームを助けたセールスマンみさおは当月のレースは、ノルマが達成できなかった後輩とともに大きく出遅れた。そして課長はこの言葉でしめた

「手持ちがある人は、そのまま一気にダッシュで。ない人はそうそうに数字取るように、以上」

そして会議室をでていった。出て行った瞬間セールスマンみさおの怒りは爆発した

「ちょっと、なんでみんな数字持ってんの?なんで出せへんかったん」

と叫ぶようにいった。すると先輩たちは、おまえはほんとバカ正直であほだよなという哀れみの目でみさおをみていちようにこういった。

「ああ、クライアントにきいてみたけど、どうしても先月はあかんって言われてん」

と。そういって、課長の背中を追うように、みな部屋をでた

「うそや、絶対にうそやずるいわ」

と叫んでいる俺の声を無視して。先輩につづいて、例の後輩が、おれにペコリと頭をさげて、閉めた時に音がしないように、ドアをゆっくり閉めた。

みさおは全身の力が抜けたように、閑散とした会議室のパイプ椅子に腰をおろした。

は〜、という深い溜息が会議室に鳴り響いた。

最悪の結末

そんなひどい話ってあるの?と思われた方も多いでしょうが、あたりまえのようにあるのです。

セールスの世界って数字がすべてなんです。当然先月はヒーローですが、月が変われば、一気に最下位です。それがわかっているから、みな断ったのですね。でも断り切れないセールスマンみさおがそういう目にあった。

報告なんかせずに黙っててもいいのです。月が変わって、初日に訪問して、その時にとれたっていったっていいのです。セールスマンみさおは、どこかに正義感みたいなのがあるのかもしれません。いや、ないなあ、断られないだけやな。

基本的にいい商品や売れている商品にはセールスは必要ありません。ほうっておいても売れますからね。

セールスをかける商品ってのは、他者に比べて圧倒的でないから、セールスが必要なのです。うそはいけませんが、完璧につくりあげられたスクリプトでセールストークをぶちかますのです。

それにより、普通の商品が、最高の商品に見えたりするのです。

セールスの根幹には、いい意味でも、悪い意味でも、絶対に売ってやるんだという血が流れています。これはもう染み付いていると言ってもいいですね。なので、スイッチがはいれば、手段を選ばず売ってしまうというのがあります。

そういうセールスがあつまったチームですから、そこにはサークル的な仲良し感はまったくありません。皆がライバルですし、まあ戦友みたいな感じですね。仲間での騙し合いなんて日常茶飯事です。

クライアントに対してもそうです。ウソは絶対にいけませんが、普通の商品を、より魅力的にみせるようにするわけですから、そこには、多少の浮世てきな空気がただようのです。

やりすぎると詐欺に近くなりますし、いいと思ってかった商品が、魔法が解けて、普通の商品に戻ったら、あれ、なんか俺だまされた感が残ります。

ムリヤリは終焉

その売り方は、もはや過去のものです。成長期ならいいんです、会社にも社会にも勢いがありますからね。そんな細かいことに気を取られているより、どんどん売ったり買ったりしたほうがいいのです。なにより勢いやスピードが大事ですからね。

ところが今は完全に成熟社会。ものがあふれ、みんなが、なんでも持っています。そんなときに詐欺まがいの商法は絶対にだめです。ゆっくり社会が動いている分、立ち止まって考える時間があります。

だまされた感についてもじっくり検討できるのです。

そうなると、無理に売った人はもうだめです。なんだ、あいつ、俺が断らないの知っていてムリヤリやったのかってなる。

課長との関係は、それから最悪になりました。みさおは課長をまったく信用しなくなったからです。

みさおとクライアントの信頼関係もなくなりました。ムリヤリ前倒ししたものを受け入れてくださいましたが、そのあとの、商談は以前のように進みませんでした。

この商品は再来月の中旬くらいに納品するのが、条件的にも在庫的にもベストでございますと提案しても、そんなこといったって、また前倒しするんじゃないのってのが、みさおにもクライアントさんにもあり、上手く進むわけがありません。

長い間かけて築いた商談スタイルは見事に終焉いたしました。

そんな反省もあり、それいらい、信念をもって、クライアントさんの事を一番に考えることにしました。それがクライアントのためになるなら、上司に噛み付いてでも断ることをしました。

以上の経験から、ムリヤリ売るのにメリットは一切ないことにきづき、それ以降、いっさいのムリヤリは辞めました。

結果的に、方針をかえたときは売り上げは落ちましたが、その後は右肩上がりで売り上げは伸びました。売り込みはしないのに、売り上げは伸びていくというシステムが完成しました。

このブログは、むりやりうったり、売られたりして困っている人のお役に立てればと立ち上げました。今後は、売らなくても勝手に売れていくセールスとはどういうものなのかというのをこのブログで書いていきます。

また、もっと立ち入った話なんかは無料のメールマガジン『次世代セールスのすすめ』で書いていきます。また、メルマガでは、今後展開するよていの、売らないセールス上達法のセミナーとか、次世代セールスのコミュニティーの案内もしていきます。

セールスのはいったメルマガは嫌だという人は、登録しないでください、そういうものが入っているのを承知で申し込んでもらわないと、それは売り込みになってしまうからね、納得したうえでお願いします。

時代は完全に、売らないセールスの時代に突入しました。あなたの手にも、売らないセールスを。