商売はお金を回収してはじめて成り立つのである。売るだけが商売ではない。営業マンが生きる理不尽な世界とは。

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今は圧倒的に自動引落やクレジット決済や振り込みなどの支払い方法が多いが、私が営業マンをやってたときは、集金というのがまだまだ多く存在した。

例えば小売店に商品を売り込む。

いいよ、100個送っておいてと言われ、すぐに送る。今日送れば、遅くとも来週の月曜日16日には着く。注文をいただき、商品を発送する。それで商売が終わったかというと、実はそうではない。

そう、まだ代金の回収が終わっていないからだ。わたしが席を置いてた業界の商慣習では、支払いは翌月か翌々月という感じだった。今回納めた商品の支払いは7月31日となる。
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わたしは、その7月の末に言って、5月の分の支払いをお願いしますと言う。了解と、その場で支払ってくれる。現金なら回収完了。手形なら、例えば先付けだと、まだ先になる。手形が落ちて始めて商売が完了となるのだ。

先輩や上司からは、お金もらって始めて商売成立だよって言われていた。

実際に、期日がきたときに、さまざな理由で、支払いをさける、もしくは伸ばすクライアントもいた。

「社長、集金にまいりました、お支払いのほどよろしくおねがいします」

実際は、ここまで杓子定規ではなく、集金おねがいしますと行く。普通だと、ちょっと待ってねと、言ったあと、支払いをしてくれる。ところがこの日、この店は違った。

「ない」
「はい?」
「お金がないから払えない」
「ないというのは」

31日の14時にきてくれというから行ったのに、お金がないというのだ。おいおい、それはないでしょ、日時まで指定しといてと思ったが、相手はお客さん。お客様は神様なので、機嫌をそこねてはいけない。私はしばらくだまっていた、すると

「今、手持ちがないのや、悪いけど明日きてくれ」

というのだ。今、ちょうど業者が何人かきて、現金で全て支払った、だから、今はないのだ、明日でいいやろってのが向こうの理屈だ。ところが、こちらにとって、明日では絶対にだめなのだ。

締めが7月末になっている。明日は8月。今日中にもらわないと、入金不良ということになるのだ。それだけは絶対にさけなければいけない。回収できないものを売り込んだのかお前はってなる。経営状態が悪化しているのを見誤ったのかってなる。売り上げノルマを達成するよりも回収が大事だと上司にならった。

これは一大事。なんとしてももらわないとと思い

「社長、申し訳ありません。わたくし、今晩本社に移動します。明日は、こちらにはいないんですよ、なんとかなりませんかね」

そういうと、社長は

「ひつこいなあ、そんなのはお前の都合だろ、ないものはないんだから払えないのだ。お金がないっていってるんじゃない、今手元にないから明日来てくれといってるのだ」

と言った。弱ったぞ、未回収は絶対にあかんと上司は言ってた。たいがいのことなら、ここまで言われれば、引き下がるのだが、ここだけはということで、私は再びお願いした。

「事情は重々わかるのですが、これは7月のご請求ですから、今月中にもらわないといけないのです。もし来月となると、未入金あつかいになって、一時的に御社との取引が」

と、なんとしても今もらわないとということを論理的にはなしていたら、クライアントは突然きれた

「わかった。もうええわ、この商品全部持って帰れ、それで今月分くらいになるやろ」

といいながら、棚にあるうちの商品を投げ始めた、俺に向かって、床に向かって。おどろいた。商品の箱は角が床にあたり潰れている。いくつかは俺にもあたった。クライアントの顔をみると鬼の形相で、店にあるうちの商品を全部投げ返すいきおいだった。

これはだめだと思ったわたしは、

「申し訳ございません、わたしがまちがっておりました」

と奴隷がご主人様にすがるように、ひざまづいて、社長の脚にすがりついて、下から顔をみあげて、懇願した。

すると、ようやく、落ち着いたか、投げるのを辞め、もういいからと手で、脚にしがみついている俺を脚から離した。

不穏な空気が流れるなか、わたしは、商品を拾って、棚の上に置いた。

「箱が潰れた商品に関しては、返品いたします。生意気言ってすみませんでした。お金は8月2日の日で結構です。明日は会議で大阪なので、申し訳ありませんがよろしくおねがいします」

そう言って、わたしは、立ち上がり、ひざのあたりの汚れを払って、店を後にした。自分の都合で切れたクライアントは気まずかったのか、何も言わなかったが、社長、お気になさらずにと、相手を気づかう余裕はさすがになく、そのまま店を後にした。

そう、こんな理不尽が営業マンを取り巻く世界では結構起こる。さすがに、ここまで、ひざまづいて、脚にしがみつくほどのやつはそうないが、理不尽ははびこっているのだ。

そんな世界なのだ、この資本主義社会は。

そんな中で、わたしたちは、何かを売っていかないといけない。その最前線にいるのが営業マンだ。ドサ回りを続け、どぶ板営業を繰り返し、理不尽の中、上司に媚び、クライアントにへつらいながら、媚を魂と商品を売りながら日々戦っているのである。

世の中で何かを売っていくには、ときに、こういう理不尽をうけいれないといけない。マーケティングだけでキレイに売れるにこしたことはないし、もちろん、そうやって売れるものも、売れることもいっぱいある。

ただ、そうじゃない部分もあるというのを知っていて欲しい。あなたの横で、よっぱらって女の子の胸をみてヘラヘラしている営業マンも、昼間はそんなな中で戦っているのである。

ものを売るって大変だ。

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