パワハラかモラハラか、それとも無罪か

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50代半ばと思われる男性が、セルフ注文式のカフェでランチをオーダーしている。私はその後ろでコーヒーを頼むために並んでいる。
「セットのドリンクは何になさいますか?」
と、レジ担当で19才の外大生で、そこにはバイトで週3回入っていて、将来は通訳になりたいと思っている女性が聞いた。
すると、なれた様子でそのおっさんが
「ホットで」
と答えた。

ん?ちょっと待って、みさおさん、なんでそんなに詳しいの?その女の子の知り合い?それとも顔見知り?と思われたのではないだろうか。いやいや違う、私はその店には始めて入った。その情報は本人の口からついさっき聞いたところなのだ(写真はイメージです)

では、なぜこの情報を私は知り得たのか。もうおわかりだろう、このおっさんが、注文したあと、ランチが出来上がるまでのあいだ、この女性に矢継ぎ早に質問したのだ。その女性はあきらかに、迷惑そうだが、笑顔を欠かさず、次々に答えていった。

「バイト?」
「はい」
「ここはバイトの子多いね?」
「そうですね、そうかも知れませんね」
「そやで、社員はほとんどおらんわ、ほとんどバイトやわ」
おいおい、おっさん、お前は常習犯か、こうやって、ほぼ全員に聞いてるんやな、週に何回か、もしかしたら毎日質問を投げかけてるんやな。迷惑なおっさんやで、と思ったその時に、タイトルの言葉が浮かんだ。

これってパワハラにならへんのかなと。客という立場を利用して、個人情報を聞きまくるってどうなんやろ。あきらかにむげに断れない状況にある。昨晩見た『行列ができる法律相談』の北村弁護士に聞いてみたい気になった。

「学生?」
「は、はい」
「どこの大学?」
「◯◯大学です」
おいおい、おっさん行くなあ。この子も、勢いで大学名までいっちゃったなあ
「おお、そうなん、優秀やね。専攻は?」
「英米語です」
「そうか英語ね、将来は何なるん?」
用意したトレイに紙ナプキンをしき、フォークとナイフをその上におきながら、しぶしぶ答えた。ナイフを一瞬強く握ったように見えた、そのまま、このおっさんをという思いが芽生えたようにみえた。
「はい、通訳に」
「おお翻訳じゃなくて通訳ね、逐次それとも同時?」
「まだ、、、」
そこまで考えてないと言おうとしたところに私は割って入った
「ホットひとつミディアムで」
タイミングとしてはあきらかに早すぎる。女の子がお待たせしました、何になさいますかという声を待ってからオーダーするべきだ。客としてはウザい客のひとりだが、今回は彼女の個人情報を保護するほうを優先した。

おっさんは、ムッとして後ろを振り返り、声の主を確かめたが、小雪舞い散る2月上旬に、ミッキーマウスのキャラクターTシャツで寝癖頭を掻きながらオーダーするおっさんを見た瞬間に、関わったらだめという判断をしたのか、逐次か同時かの答えをまたずに1歩前に進んだ。

そのタイミングで日替わりランチであるカレーが厨房からあがってきたので、それをトレイに乘せて、お待たせしましたと答えて、彼女の個人情報の漏洩はそこでストップした。

おそらくスタッフから、質問じじいとアダ名をつけられている、そのおっさんは、ご満悦の表情でトレイをもって、席に進んだ。

キャバクラ行けよと思った。620円で得ることのできる情報の上限をあきらかに超えている。15000円キャバ嬢に払っても、ここまでは得られないだろう。そういう意味ではあきらかに、常識の範囲を超えている。

と書きながら、棚に上げていた自分の事を思い出した。10年以上前、大阪ミナミのクラブのめぐちゃんのことが好きで、1ヶ月に1回クラブに通っていた。だいたい2万円〜2万5000円くらいだった。でも彼女と2時間話せるなら高くないと思っていた。

ところがその後彼女がクラブの仕事以外のサイドビジネスを始めた。彼女は体にいいというサプリメントを売り始めたのだ。体にいいから俺にも飲んでほしいと、何度誘ってもオッケーしてもらえなかった食事をしようと言ってくれたのだ。

サプリメントは別にどっちでも良かったが、外でデートできるならと思ってふたつ返事でオッケーした。おしゃれなカフェでケーキセットを頼んだ後、彼女が薦めてくれるサプリメントを買うことにした。1ヶ月1万円だった。

ちょっと高いなと思ったのだが、めぐちゃんが俺のことを思って薦めてくれる。しかも、体にいいのだからまあいいかと思ったあと、俺はあることに気づいた。ちょっとまてよ、これって安くないかと。

そのサプリメントはめぐちゃんからしか買うことができない。いや手続きを踏んだら買えるのだが、わたしから直接でもいいよという。もちろん直接でしょ、だって会えるからね。まてよ、1ヶ月に1回あえて、しかも1万円+カフェ代2000円弱。クラブ行くより安いやんと思ったのだ。

俺って頭いいと思い喜んだが、その関係は6ヶ月しか続かなかった。なぜか、彼女はそのサイドビジネスをやめてしまった。それで終わった。おれは、もう元には戻れなかった。12000円で会えてたので、今さら25000円は出せなくなっていた。それ以来、俺はクラブには行かなかった。

もしかしたら、おれは、前述のモラハラ親父と同じことをやっていたのではなかろうか。立場を利用して安い値段で彼女と話していたおれはおなじじゃないのか。いや、そういうのだったら、彼女はどうなのか。俺が彼女のことを好きというのを知っていて、断らないだろうとサプリメントを売ったことにはならないのか。彼女のそれはパワハラでもモラハラでもないが、立場を利用しているという意味では同じだ。それに対向するために取った、私の行動は正当防衛が認められないのだろうか、だとしたら、おっさんとは違うのではないのだろうか。

最近増えてきたハラスメント問題。はたして10年前の私の問題や今回の事件は、ハラスメントとして立件できるものなのか。北村弁護士に聞いていみたい。

違う違う、こんなことを書くためにブログ開いたんちゃうねん。今月末のセミナーではなすコンテンツ作らなあかんのに、あのおっさんめ、公務執行妨害もつけとくぞ。