新快速シリーズ。センターラインを超えるのはダメダメ。

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半分づつでしょ。

JR琵琶湖線の新快速に乗り、席が空いていて座る時にいつも思う、自分に言い聞かせる。大阪に移動する時に利用する新快速。比較的すいている時間帯に乗ることが多いので席につける時が多い。新快速の座席は、進行方向に向かって座るタイプ。2人がけの座席が通路をはさんで左右にあるタイプだ。

私は席につくときに心がけることがある。私がというより、ほとんどの人がそうだと思うが、特に私は体が大きいので意識する。そう、センターラインだ。

座席は2人がけなので、席についたときに私が使用できる範囲はセンターラインを超えてはいけない。シートには模様がついているので、どこまでか確実にわかる。1人で座っているときは、当然この線をはみ出しても何の問題がないので、ひとりの時はそうやって座る。

でもその時は、駅に停車するごとに、必ずセンターラインを超えないように自分のエリアに戻るように座りなおす。乗ってきた人が座る可能性があるからだ。まあ、それでも、最後まで席は埋まらない。理由はわからない。このおっさん、体がでかいから狭いだろうなと思うのか、う、なんかやばそうだなのか、いつも最後に隣の席が埋まる。
(写真はイメージです)

まあ、そうはいっても、席が丸々空いていることはあまりなく、どちらかと言えば、空いている席にお邪魔するほうだ。おお、でかいおっさん入ってきた、となりに座らんといてくれと思っているのではないかなと思いながら、お邪魔する。

先日電車に乗った時のことだ。何故かその時間帯にしては混んでいて、席がひとつしか空いてなかった。そこには50代半ばの営業マン風のかたがスーツを着て乗っていた。空いている席に置いていたカバンを、私が座ろうという姿勢をとったときにすっと取り上げて自分の足元に置いた。

わたしは、ペコリと軽く会釈して座った。ところがだ、このおっさん、足を組んでいた。左足の上に乗せられた右足の靴一足分が完全にセンターラインを超えていたのだ。そして、私が腰をおろしても、座り直そうとせず、そのままで、肩もセンターラインを超えていたのだ。

私は自分の陣地を確保すべく、肩を接触させ、もぞもぞと動いたのだが、一向に動く気配はない。膝の上においた文庫本の小説を読んでいる。さて、どうしたものか、ここで肩をグイグイ押したり、右足の靴の裏に、刺激を与えたりするのはなんかセコい感じがする。

どうどうと、すみません、もう少しそちらに寄ってもらえますかということもできるが、なんか気まずくなるのでそれも避けたい。まあ、こんなことはしょっちゅうあるので、自分が我慢すればいいかと思うのだが、微動だにしない、おっさんの感じにだんだん腹が立ってきた。

まったく配慮のないおっさん。もしお前が消費者向けに何か売っているなら、絶対おまえからは買わない。そんな気づかいができないやつから、いいものを売っているはずがない。後をつけて、会社名確認したろかと思ったが、まあ、それも現実的ではない。

あかん、やっぱり今日はがまんできない。少しでもこちらを気にする感じなら、全然問題なかった。人間って、きっとそういうものなのである。ちょっと、あやまってくれたらよかったのにって、そういうことってよくある、ほんのすこしの気持ちなのだ。

おっさん、あかんで、それがない。そう思った私は、ついに報復することにした。自陣を犯されて黙ってるわけにいかない。ピカピカに磨かれた靴の尖った部分があきらかにこちらを攻撃している。専守防衛が採用される状況だ。わたしはついに報復にでた。

今まで色々やってきたが、最高に効き目がある方法をとった。このブログをずっと読んでくださっている皆さんにはお馴染みの方法、体をひねるだ。

私は、肩があたっているのが気になるわ〜という感じで、体をもぞもぞとまず動かした。そして、当たるのを避けるために体を動かしますねという感じで、体を斜めに、ひねった。ひねる方向は当然、おっさんのほう。あたっている右肩を引いて、胸を約30度、おっさんのほうを向けた。そして腰も向けた。

ラウンジでお姉ちゃんが、いらっしゃいませ、みさおさん、久しぶりという時にやる感じで、半身で構えておっさんのほうを向いた。

ようやく反応した。何か違和感があったおっさんは、こっちをちらっと見た。目があった私は、爽やかに微笑んだ。その微笑みは、わたしにとっては爽やかだったが、おっさんにとってはそうではなかった。ガチムチな体型で、時に、そっち方面にとられることもある容姿がこうをそうした。

おっさんは、あわてて目をそらし、深く席に座り直し、組んでいる右足をほどき、元に戻し、反対側に半身になった。

自陣を見事に取り返した。おっさんも半身になったので、センターラインを超えることがなくなった。こうして私は、大津手前で自陣を確保し、戦いを京都まで持ち越すことはなかった。

その、おっさんは、大津で、あわてて逃げるように降りていった。本当は京都まで行く予定だったのかなと思って溜飲を下げた。おっさんは、おりるときに私に会釈しながら、わたしと前の座席の間を、できるだけ私に触れないように抜けていった。

私は通りやすいように目一杯深く腰掛けた。そして、彼の会釈に満面の笑みでうなづいた。彼の左腕に鳥肌が立っているように思えた。