5歳児の妹は3歳児。忘れ物を全力で届けてくれる天使。

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ふみたんは人の子。友達の子で俺の友達。

ふみたんのお母さんが、みさおさん忘れ物しているよと連絡をくれた。イベントが終わりそのうちあげをと宴をひらいてくれたのだがその時に時計と帽子を忘れた。

仕事帰りに車で立ちよった。子どもたち3人が庭で遊んでいた。あ、車がきた、誰だろうと運転している俺に3人が視線を投げる。

俺だと気づいた瞬間笑顔があふれる。普段は長男が元気よくかけよってくるのだがこの日はふみたん。あっ、みさおやという顔を、目を大きく見開いて、今までみたこともないようなスピードでかけよってきた。

そして車が停まるがはやいか、俺がドアを開けようとする前にドアノブに必至で手を伸ばしあけようとしてきた。

車のドアは外に開く。それをまだ知らない3歳児はドアの前に立っている。ふみたん、そこに立っていたらドアが開けられないから、ほらもう少し離れてと中から手で合図する。

後から追いかけてきた長男と次男が、ほらふみ、ちょっと下がりって感じでふみたんの腰を後ろから優しくつかんでひっぱる。なんという兄弟愛。それだけで仕事の疲れがとれるのだが、それの10倍位の癒やしがこのあと飛び込んでくる。

ふみたんがようやくはなれたのでドアをゆっくりと開ける。60センチほど開いたところで興奮気味のふみたんは待ちきれず回り込んで入ってくる。

エンジンを切り体を90度右に反転させ右足を車からだす。右足を地面につける。右膝は100度程度折れ曲がる。ドアと右膝頭の間は15センチ。

右膝の右側からふみたんが回り込んでくる。必死だ。俺の太ももに両手を置き、ドアと膝頭の間に体をねじ込んでくる。ようやくすきまを通ったふみたんは右足とまだ車の中に入ったままの左足の間の広いスペースにようやくはいりこむ。

右手を俺の左足の上、左手を俺の右足の上に置いたふみたん。ようやくここまでこれたと落ち着く場所に落ち着いたふみたんは俺をみあげた。

座っている俺よりはるか下にいるふみたん。俺に話しかけるために首を後ろにまげ下から俺をみる。

あららと一瞬思う。彼女の両鼻の穴には、細菌やちりほこりを体の外にだすために人間がもつ免疫システムによってつくられた緑色の物体がぎっしり詰まっている。ふみたん風邪ひいたのかな、はなまみれでもかわいいのねあなたはと思いながらみていると話しはじめた

「みたおたん、みたおたん、とていとぼうちわとぅれてうよ」

さ行とか行が上手く言えないふみたん語にしっかりなれた俺には彼女がなんと言っているかすぐにわかった。おお、そうなのかふみたんは俺の姿を見て、俺が時計と帽子を忘れていて、俺がそれをとても大切にしてるのだろうから、みさおはきっと早く欲しいだろうと思ってくれたから、今までにみたことがないスピードでかけよってくれたのか。とてつもなく感動した。

(写真は鼻に分泌物が詰まっていないふみたん)
俺にそれを伝えたふみたんは俺の右足を両手でおしてドアとの隙間を大き確保し抜け出し一目散に家にかけていった、おたあたんといいながら。縁側から部屋にあがり俺のぼうちととていをもってきて「はいとれ」と渡してくれた。ありがとうとお礼を言った俺は、キュン死した。

ふみたんが人の子でよかった。もしこれが自分の子だったら自分ちにいたら、俺は一歩も家からでられないだろう。