拝啓小売店様2

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エリアマネージャーやブロック長、スーパーバイザーとよばれる役職がチェーン小売店さんにはある。

地区の数店舗を束ねるリーダーだ。

いつも愛想のない店長がこの日は元気一杯。入る店を間違えたのかとかと思うほど元気がいい。「いらっしゃいませ〜〜〜〜〜」何が起こったのかしばらくわからなかったが、まもなく判明した。

エリアマネージャーが来ているのである。30代前半のスーツに身をつつんだ男性がシステム手帳になにか書き込んでいる。向かいのパチンコ屋さんの店員がライバル店の客数を調べに来てる感じではない。あきらかにエリアマネージャーだ。店長が彼を意識していつもにない動きをしている。

いらっしゃいませ〜と言う目線の先に客はなく、彼がいるのだ。

上司に嫌われたらサラリーマンは大変だがそれを重視するあまりお客さんを無視しているというシーンはよくある。

お客さんは感じる。

めちゃくちゃ怖い顔をしたエリアマネージャーもいる。あなたが店の関係者という事はばれている。絶対にニコニコしたほうがいい。しないならしないでもいいのだが、それならばれないようにしたほうがいい。

誤解があるといけないので書いておくが、私は小売店様がすべてホスピタリティー満点で、すばらしい接客をしないといけないと言っているのではない。小売店様がそういう理念でそれをかかげているなら、やったほうが良いと言ってるわけだ。

滅茶苦茶愛想が悪いそば屋があってもいいわけである。

■理念およびシステム

当店は皆様においしいおそばを提供する事に全力を注いでいます。おいしいそばをつくるのに邪魔になるような事は一切行ないません。したがって、「いらっしゃいませ、ありがとうございます」も言いません。それを言う事にエネルギーを使いたくないのです。

私のエネルギーは有限です。お客様に極めて表面的な接客をすることで、おいしいそばを作るエネルギーを使ってしまいます。そんな事はしたくありません。

もし、お客様がもの凄くおししいそばではなく、そこそこおいしいそば+そこそこの接客をお望みなら他店をお選びください。

なお、お金をいただいている時間も惜しいのでお金は入り口横の料金箱に投入ください。料金はメニューに書いております。消費税込みになっております。両替機を入り口横に設置しております。そちらをご利用ください。

注文はおくの厨房に向かって大きな声でお願いします。残念ですが、返事はいたしません。理由は前述の通りです。エネルギー温存です。注文が通ったかどうかは、ブザー音で確認ください。お客様の注文が通ったらブザー音が1回なります。聞こえなかった場合2回なります。申し訳ありませんがその際はもう一度オーダーしてください。

どうでも良い事ですが、そば作りを邪魔せず、一番明確な方法なんです。足下に足で踏むボタンがあります。私は皆様のオーダーを聞き、これを踏む事でブザーをならし、返事のかわりとさせていただいております。ご了承くださいませ。

ご迷惑おかけして申し訳ございません。この理念に書き込まれた文章からも想像できるように私はみなさまにとても感謝しています。本当は飛んで行って抱きついてお礼をいいたいほどなんです。

ですが、そんな事でほんとうに上手いそばを作る邪魔をするわけに行かないのです。あしからずご了承くださいませ。

というそば屋があったらどうでしょう。私は喜んで行きますね。店主はおいしいそばを提供するためだけに生きている感じがひしひしと伝わってきます。この見せに行ったら接客うんぬんは言いません。

理念をかかげたなら全社上げて取り組まないとそれは、絵に描いた餅になるということです。

本気は人を動かします。