大阪マルビル地下2階の共同トイレで、いきなり声をかけてきたサラリーマン。そこまでして伝えたかったこととは。

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大阪マルビル地下2階。レストラン街の中心付近にトイレがある。個々のお店にトイレはなく、中央に1箇所、北側奥に1箇所設置されたものを共同で利用する。

うどん屋できつねうどん定食を注文した後トイレに。店を出て左に曲がる、ひとつ目の角を左に曲がって5メートル左側にトイレがある。その角の手前1メートルまでに近づいた時、反対側から歩いてきた30代前半のサラリーマンが、その角を右に曲がった。

タッチの差で俺はその角を左に曲がった。その先に飲食店はないので、彼の狙いはトイレだろうなと予測したが、そのとおりだった。あと1歩だった、もし便器がひとつだったら、待たないとと一瞬思ったが、我慢の限界にはほど遠く、まあ、待てばいいやと特に気にもとめなかった。

左に曲がったら2メートルほどでトイレの扉。引いて開けるタイプ。もちろん彼が先に手をかけた。酔っ払っているのか、必要以上に力をかけてドアを一気に引き抜いた。彼はその時に俺がいるのを確認し、ドアを大きめにあけて、俺に開ける手間をとらせないようにほどこした。コーナーを曲がるときに、すでに俺の存在を確認し、この角を曲がるならトイレだろうと、きっと彼も確認していたのだと思う。
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大きめにドアを開いた彼に対してお礼の意味でペコリと頭を下げた。ところが、彼はもうすでに目線を切っていたので、それを認識はしていなかった。

閉まりかけのドアに右手をかけ、大した労力も使うことなくドアをあけられたことに感謝しつつ室内にはいった。小便器は2つあった。気を回したかどうかは不明だが、彼は奥の便器を利用していた。普通は近い手前を利用するだろうから、おそらく俺のために空けてくれてたのだと推測できる。

さすがにそこではお礼をせず、無言で用を足していた。するとまもなく、おもむろにポケットから携帯電話を取り出した。おお、用を足しているわずかな時間も惜しんで携帯をみるんだな、もうスマホから離れられないんだろうなと思っていたら、ちいさい声が彼と俺のあいだから聞こえてきたような気がした

「はんしん・・・・」

声の主は彼だった。思わず声が出てしまったのだろうなと思っていると、今度はお大きめの声で

「勝ちました。阪神勝ちました」

あきらかに今度はひとりごとではなく俺に言っている。

「おお、勝った?」

知らん男にいきなり声を、しかもトイレで用を足している時にかけられて、瞬発的に答えている自分をすごいなと思いながら答えた。

「はい、すみません。勝ちました、やりました」

彼はあやまった。何故あやまったのと思ったが、それは、いきなり知らんのに声かけてすみませんの、すみませんだったのだと思う。彼はその後も幾度となくあやまった。それにしても関西ってすごい。気さくだ。先日もこのブログで、商店街でなんの前触れもなく、声をかけてくるおばさんの話を書いたが、本当に陽気というか気さくというか馴れ馴れしい。

『煮るん?焼くん?』

気さくなのもおもしろいが、彼は俺が野球に興味をもっているのか、しかも阪神ファンなのかというのを一切確認せずにはいってきた。いや、気の利く彼のことだ、もしかしたら、俺の立ち居振るまいや見かけの感じで阪神ファンだというのを見ぬいたのかもしれない。

「おお、じゃあ、首位?」
「いえ、ヤクルトも勝ちましたんで」
「まだ2位か。0.5ゲーム差?」
「え〜っと、はい、0.5です。で、1位から4位までが2.5ゲームです」
「おお、それやったら、まだ全然わからんなあ」
「はい」

最後の全然わからんなあのセリフは、用を足し終えて、手を洗いながら彼を見て言ったセリフだ。そして俺はじゃあと言ってトイレを先にでた。わかいのに長いなあ、やっぱり飲んでるんやろうなと思いながら、俺はきたみちをうどん屋まで引き返した。

なんか気さくやなあ大阪の人は。これは前の記事エレベーターで遭遇した女達に会った30分ほどあとの出来事だったので、何やねん大阪、ええまちやと何となく心があったかくなって笑えてきた。

近畿以外の人からみたら関西方面はみな同じと思うだろうが、実際は府県によってその性質は大きく違ってくる。今日は、やっぱ大阪やなあというのに2連発ででくわし、そのエンターテイメント性の高さにあらためて驚かされた。

大阪で借りているコワーキングスペースの今度利用しつづけるかどうかちょっと考えていたが、解約して大阪にいかなくなるのは少しもったいない気がする。もうしばらく置いておくことにしよう。